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この《幸せ》を、あなたにも。短篇2作を自作朗読した記念CD付。

本と幸せ

北村薫/著

2,640円(税込)

本の仕様

発売日:2019/09/26

読み仮名 ホントシアワセ
装幀 おーなり由子(新潮文庫版『月の砂漠をさばさばと』より)/装画、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-406614-8
C-CODE 0095
ジャンル 文学賞受賞作家
価格 2,640円

「『本と幸せ』は、《ほんと、幸せ》を祈る声でもあります。この本が、みなさんの喜びとなりますように。」(あとがきより)――近況がわかるエッセイ、秘蔵の初創作、高校生のショートショート7篇、自選短篇ベスト12発表、全著作リストも収録。作家生活30周年記念愛蔵版。本を読む喜びを感じてください。

著者プロフィール

北村薫 キタムラ・カオル

1949年、埼玉県生まれ。早稲田大学ではミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、1989年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。1991年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。小説に『秋の花』『六の宮の姫君』『朝霧』『スキップ』『ターン』『リセット』『盤上の敵』『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『月の砂漠をさばさばと』『ひとがた流し』『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)『語り女たち』『1950年のバックトス』『いとま申して』三部作『飲めば都』『八月の六日間』『太宰治の辞書』『ヴェネツィア便り』『遠い唇』『中野のお父さん』『中野のお父さんは謎を解くか』などがある。読書家として知られ、『詩歌の待ち伏せ』『謎物語』『うた合わせ 北村薫の百人一首』など評論やエッセイ、『名短篇、ここにあり』『名短篇、さらにあり』『とっておき名短篇』『名短篇ほりだしもの』(宮部みゆきさんとともに選)などのアンソロジー、新潮選書『北村薫の創作表現講義』、新潮新書『自分だけの一冊――北村薫のアンソロジー教室』など創作や編集についての著書もある。2016年、日本ミステリー文学大賞受賞。2019年、作家生活三十周年を迎えた。

書評

師匠と呼ばせてください

貫井徳郎

 昔はともかく、現在の文筆業界隈で師弟関係を結ぶ小説家はいない。もしかしたらぼくが知らないだけでどこかに師弟がいるのかもしれないが、少なくともぼくの周りにはいない。しかし、ぼくが勝手に師匠と思っている人ならいる。もちろん、北村薫さんのことである。
 何しろ、小説家としてのぼくは北村さんがいなければ存在していなかったのだ。ぼくが鮎川哲也賞に応募したとき、下読みをやっていたのがなんと北村さんだった。本選考委員じゃなくて、下読みですよ。そして北村さんの家に届いた原稿の中に、ぼくの書いたものが入っていたのだ。北村さんはそれを最終選考に残し、落選しても出版するよう進言してくれた。予想どおり(?)落選したのだが、北村さんの推薦もあってぼくはデビューすることができた。
 それだけではない。デビュー後十年に亘って鳴かず飛ばずだったが、北村さんの推薦の言葉を載せた帯をデビュー作につけたところ、馬鹿売れ。お蔭で今もこうして小説家として生きているのである。自慢だが、これほど北村さんの世話になった小説家は他にいない。弟子と称しても、どこからも文句は出ないだろう。不肖の弟子だが。
 その北村さんが小説家生活三十周年を迎えられ、記念のエッセイ集が出版されることになった。それならば、どんな形でもいいので関わらせて欲しい。というわけで、書評を書かせてもらうことになった。書評といっても、北村さんとの個人的繋がりも書けとのオーダーである。そのため、自分がなぜこの書評を書いているのかを説明した。前振りが長くてすみません。
 実は単に世話になったというだけでなく、小説を書く上でも北村さんを師匠と思っている。これはご本人にも言っていないことだが、デビュー作を書くに当たって、人物描写の参考にしたのが北村さんと宮部みゆきさんの作品だった。作風はおふたりとぜんぜん違いますけれど、本当の話です。ミステリーにも人物描写が必要なのだと、おふたりの作品から学びました。
 北村さんから学んだことは他にもある。物事を楽しむには、面白がる才能が必要だということである。ともかく北村さんは、無類の面白がりだ。まさに、面白がる才能に溢れている。このエッセイ集を読めばわかるが、普通なら見逃してしまうことにも面白みを見いだしているのだ。そしてそれはかつて読んだ本の記憶と絡み、文章となってぼくたちの前に現れる。面白がる才能が北村さんほどない者は、「こんなふうに楽しめばいいのか」と学べるわけだ。
 面白がりということは、興味の幅が広いということでもある。この本にまとまった文章の範囲に限っても、焼きリンゴからサザエさん、歌舞伎や和歌、俳句、阪神タイガースに至るまで、北村さんが好奇心を覚えない事象は世の中にないのではないかとすら思える。ぼくも小説家になるくらいだから比較的好奇心は強い方だが、北村さんにはとても敵わない。おそらく、現役の小説家の中でもトップクラスのはずである。
 そんな北村さんが、あちこちに好奇心を向けながらもミステリーを、特に本格ミステリーを愛しているのは、やはりミステリーファンとしては嬉しいことだ。本書の中でも、たくさんの文章でミステリーの魅力を語っている。北村薫さんが他のジャンルの書き手ではなく、ミステリー作家になってくれたのは、すごく幸せなことだと多くの人が思うのではないだろうか。
 語りたいことが多くてとりとめのない文章になってしまったが、最後にひとつだけ、「「二廃人」のはなし」には大笑いしたとつけ加えておこう。文章で読んでも、北村さんの口調が脳内で再生されます。

(ぬくい・とくろう 作家)
波 2019年10月号より
単行本刊行時掲載

目次

エッセイ
★今年の本と出来事――「活字倶楽部」作家アンケート/★マイベスト3/★「考える人」作家アンケート(海外の長篇小説 ベスト10・老年をめぐる私のおすすめ本3冊・眠れぬ夜の本 マイ・ベスト3・漱石 私のベスト3)/★北村薫の読まずにはいられない/★光と闇を行き来する語りの妙 白石加代子の『雨月物語』/★菓子を読む/★旅する目/★『真田風雲録』/★ものの名前――私の山田風太郎/★駅前の本屋さん/★タブーは世に連れ/★身をもって知る、湿布とビールと猫(?)との関係。――なんだかんだの病気自慢/★紙は想いを載せるもの/★蘆江の鞭/★時を経ても色褪せない周五郎の大きさ/★行けないところへの旅/★この人・この3冊 フジモトマサル/★半歩遅れの読書術/★甘くない蜜の味 二冊を読む/★人間往来 有間皇子/★「母の物語」を支える紫の上の生涯/★書棚の果実/★『舞踏会の手帖』/★交遊録 ゆず/★畑の中のホール/★ながすぎる・長すぎる/★北村薫の口福/★こころの玉手箱/★書かずにはいられない/★アンソロジストの楽しみ/★走者を生む本/★遠い日の「かき氷」/★唯一無二のエラリー・クイーン/★醤油味でも甘い煎餅/★懐かしのメロディ/★表現する人/★秋の夜長のミステリ小説のすすめ/★百万塔の誘惑/★あすへの話題(春原さん・木の名前・模範解答・びっくり、ピー・乱歩の理論・四十にして惑はず・ごぶ ゆるね・円錐の頂点・ハエを取る三船・お好み焼きと投手・庭に一本・隠密剣士・買い戻された手紙・グレーの秋・葉書の値段・会っている・隠れんぼ・東京大歌舞伎大一座・星を作る人・それぞれの形・俳優楽屋話・愛すべき強引さ・花の名・ねねよ、かえれ・昭和は遠く)/★三つの箱/★谷崎を戦前に読む/★懐かしくなんかないぞ/★闇と光明/★歌舞伎はギリシャ神話/★頭で書いた「カルメン」/★随想(揚げ餅の雑煮・不思議な瞬間・忍者如月・ミリさんと明治天皇・一茶はどこへ行った・仕事中・君恋し・鳶に油揚げ)/★宝の箱/★父に連れられ、国立へ――かぶき随想/★春風は吹いていたか/★回復期には新聞漫画/★松本清張を読む小学生/★『春の盗賊』――ロマンスの地獄に/★教科書が言葉を支える/★「二廃人」のはなし――わたしと有栖川有栖さん
自選短篇ベスト12+朗読CDのこと
高校生のショートショート
☆宇宙の会見
☆世もすえ
☆概念マシン
☆密航者
☆完璧
☆忠実
☆ストップマシン
北村薫 全著作リスト(1989〜2019)
あとがき

付録CDのお知らせ

北村薫さん
北村薫氏

 北村薫さんの作家生活30周年を記念して刊行する『本と幸せ』の付録CDに、《自選短篇ベスト12》の中から、「さばのみそ煮」(『月の砂漠をさばさばと』所収)の自作朗読を収録します。
 梨木香歩さんが新潮文庫版の解説に、こう書いています。
「さばのみそ煮」にあるように、お母さんがかつて子供だった頃、そのお父さんが思いがけず一度だけ歌った歌を、その幸福感と共にいつまでも覚えていたように、さきちゃんも、お母さんがでたらめに歌った「月の砂漠をさばさばと」を、いつまでもいつまでも覚えているだろう。日常の至福はそのように受け継がれてゆく。(新潮文庫解説「日常を守護する」より)
 まさに、このたび、その《でたらめ歌》オリジナルを北村薫さんが、ご自身のお父さまの歌った歌の記憶そのままに、朗読のなかでご披露くださいました。そのメロディを、優しい語りとともに、合わせてお楽しみください。

 朗読は、2019年6月18日ラカグの記念本プレイベントにて。付録CDにはもう一篇、「白い本」(『ヴェネツィア便り』所収)も収録。

絵/おーなり由子
絵/おーなり由子

 このたびの記念本の装幀は、『月の砂漠をさばさばと』文庫版の幸せなお母さんとさきちゃんのイラストで飾りました。

 例えば、心がささくれて複雑に感じられる時、このふたりのやりとりや、この本の中に流れる空気を思いうかべると、つい「ふふふ」と、思い出し笑いしてしまうかも――まるで本当の知り合いの、とっておきの話を思い出すみたいに。これは、心にぶらさげておきたくなる、やさしいおまもりのような物語です。

おーなり由子
(文庫刊行時帯推薦文より)

波 2019年10月号より
単行本刊行時掲載

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