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人生、山あり谷あり家族あり

岸田ひろ実/著

1,540円(税込)

発売日:2022/05/18

書誌情報

読み仮名 ジンセイヤマアリタニアリカゾクアリ
装幀 川畑樹利佳/カバー・表紙 表・写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-354611-5
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,540円

人生の大きな困難を乗り越えられたのは家族のおかげ。元気おすそわけエッセイ集。

長男の知的障害を伴うダウン症を受け止めた矢先、最愛の夫が39歳で急逝。自分が一家の大黒柱となって奮闘中、大動脈解離となり手術の後遺症で車椅子生活を余儀なくされて――。死にたいほど落ち込みもしたけれど、前を向けたのは心の中に生きる夫と大事な子供たちがいてくれたから。七転び八起きの人生をユーモアまじえて綴ります!

目次
第1章 私の人生を変えた3つの出来事
頼りの娘から「死んでもいいよ」と言われた日
専業主婦歴15年でまさかの再就職活動
今も心で聞く「あほちゃうか」は万能フレーズ
落ち込んでいる時にプラス思考になる方法
まゆ毛とオシャレと私
自信とは自分を信頼してつけるもの
差別していたのは、他でもない自分だった
自分を信じることができれば、怖いものはなくなる
第2章 いつも家族を笑顔にする優しい長男
ダウン症で知的障害のある息子・良太
周りに「知ってもらうこと」、本人に「伝えること」
必要なのは、「特別な存在」にしないための「特別な支援」
職場や学校で障害のある人と接するときは?――良太が教えてくれたこと
山本五十六メソッドと信じる力
「ママ、トゥーリ、つくって」から始まる連想ゲーム!
良太とスイミングスクールにまつわるエピソード
第3章 顔も心もパパと瓜二つな頼りになる長女
生まれた時から父親と瓜二つの娘・奈美
誰かを大切にできるのは、誰かから大切にされた人
思い込みと使命感のアドバイスをやめる
親子の対話は、安全地帯を見つけることから
アンパンマンは人格を否定しない
「幸せがこわい」と感じた日のこと
第4章 案ずるより産むがやすし、横山やすし!
ママにできることはまだあるかい?――赤べこの思いを伝えたい
私の家族はダイバーシティ
あなたのおにぎりは、丸ですか、三角ですか
間違えて乗った電車が時には目的地に運ぶ
これからの時代に求められるのは「優しい人」
息子が仕事をサボって帰ってきた!?
第5章 岸田家のコロナ物語
「なんか話し方、怖いで」
変化は慣れると役に立つ
「明日仕事ある?」と毎日質問する息子のルール
「大丈夫や! 寝とき!」
幸せとは何なのかを知れた2020年。幸せに生きると決めた2021年。
ビビンバが教えてくれた生きる意味
第6章 「死んでもいいよ」から「生きるんやで」へ
さらなる試練
命を助けていただいたこと
のんびりのび太くんになろうと心に決めた退院前夜
良太の揺れる心 鬼電の巻
良太の揺れる心 行く? 行かない?の巻
聖火の道を歩き……いや、走り終えて
おわりに

書評

自分にも誰かにも、優しくなれる

しまだあや

 大切な人の他界、ダウン症や発達障害、下半身麻痺、認知症。周りからは「大変だ」と思われることも多そうなキーワードと共に歩む岸田ひろ実さんとその家族。ひろ実さんは本の中で、こう話す。
「当の私たちは『大変だ』と思ったことは一度もありません。うちはダイバーシティ、つまり理想とされるコミュニティ。最高に愉快でハッピーな家族なのです。」
「辛い」と思ったその時。「幸せ」と思ったその時。「死にたい」と思ったその時。「生きたい」と思ったその時。それは何故で、誰が近くにいて、どんな言葉をかけられ、何に気づき、「最高に愉快でハッピー」があるのか。この本には、それらのエピソードが綴られています。
 本を読み終わって、まず最初に気づいたこと。
「あれ。私、もしかして今、弱ってんのかな?」
 もうちょっと丁寧に言うと、この書評を綴るにあたって好きなシーンをメモしていたら、比較的、落ち込んでいる人に向けたシーンを多く挙げてて。結果、自分の弱り具合に気づくことができた、という。ひろ実さんの言葉を引用しながら、紹介します。
 1つ目。「私は今でも元気がない時は無理して元気になろうとするのではなく、勇気を持って、いつもよりオシャレをします。」
 ひろ実さん、入院をたくさんするんだけど、その時、鏡に映る自分の顔のことを「ウルトラマンのダダ星人みたい」って言う(注:ひろ実さんはめっちゃ美人)。でも、ご友人がお見舞いに来ることになったから「まゆ毛くらいは描くか……」ってなる。そしたら「ダダより綺麗……! あっ、ごめんねダダ」って言う。それから、「じゃあパジャマも着替えて……オシャレして……ああ、お出かけも……」それで、ちょっとずつ元気になってく。
 2つ目。「今でも落ち込んだ時には、『明日何をしたいのか』、ここからはじめているのです。」
 同じく入院中、なんとか前向きに……ってことで、「明日何をしたいか」を無理やりにでも書き出していくひろ実さん、「まず、みかんゼリーを買いたい」って書く。「それから、外の空気を吸ってみたい」って書く。それで、また、ちょっとずつ元気になってく。
 3つ目。「自分のことを信頼できる行動とはなんでしょうか。それは、自分の『やろう』と『やれた』を一致させること。」
 さっきの「みかんゼリーを買いたい」もそうだし、「外の空気を吸ってみたい」もそう。「ここを片付けよう」「あれも頑張ってみよう」そんな小さな「やろう」「やれた」を繰り返していくと、ちょっとずつ自分への信頼を取り戻していけるよ、と読み手に教えてくれるシーン。
 ……ホントは他にも好きなところ、たくさんあるんだけれど。おむすびを、ひろ実さんは俵型、娘の奈美さんは三角、息子の良太さんは真ん丸に握るシーンとか。そんな良太さんがいきなり「ママ、トゥーリ、つくって」って言うところとか。ひろ実さんと奈美さんの安全地帯は、車の中だったこととか。「無関心が心地よかった」という旅先の話とか(気になるでしょ? 笑)。
 でも、最初に出たのはさっきの3つ。落ち込んだ「気持ち」を変えるのは難しいけれど、「行動」なら変えやすいし、気づけば「気持ち」も変わってく、そんなシーン。それで、自分の弱り具合に気づいたのだ。
 だから今週末は、自分を回復しに出かけようと思う。起きたらまず、しばらく袖を通せていないワンピースを着る。ばっちりメイクで近鉄百貨店の食料品売場に降り、いっちばん高い「みかんゼリー」を買って、屋上のベンチで食べる。そのあとのことは食べながら決める! うん、そうしよう。
 作家、母、車椅子ユーザー、セラピスト、そしてダイバーシティ家族の一員としての目線。あらゆる人に伴走し、伴走され、あらゆる予想外を歩み、あらゆる視点を持つ、優しいひろ実さん。けれど時には、「先ではなく、今この瞬間だけを見つめて、ぼうっとする」ことの大切さを話してくれるひろ実さん。そして、それらの過程や不思議に好奇心を持ち、山あり谷ありを越えていくひろ実さん。ひろ実さんに触れていると、自分の素直な気持ちがどんどん、洗い出されてく。自分にも誰かにも、優しくなれる。
 ところで、私は「自分の人生を折れ線グラフにする」という時間を、たまに取る。x軸は時系列。y軸は気持ちのアップダウン。「毎日おだやかに過ごせたらいいな」と思っていても、その実、ヘビメタ曲を波形にしたような、激しいグラフができあがる。そんな時、いつもチャップリンが出てきて肩をぽん、と叩き、「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」という、あの名言を唱えてくるので、「まあ、そうだといいけどな~」とか言いながら、おやつを食べる。でも、これからはチャップリンじゃなくて、ひろ実さんの顔が浮かぶと思う。にっこり笑って、でも何も言葉は言わないで、ぎゅっ、とされる。ような気がする。

(しまだ・あや エッセイスト)
波 2022年6月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

岸田ひろ実

キシダ・ヒロミ

1968年大阪市生まれ。ダウン症で知的障害のある長男の誕生、39歳だった夫の急逝、さらに自身が大動脈解離で受けた手術の後遺症によって車椅子生活になる。リハビリ中から心理学を学び始める。2011年、娘・奈美が創業メンバーである株式会社ミライロに入社し、同社主催講演などの講師を務めていた2021年、感染性心内膜炎で再度の心臓手術を受ける。2022年5月現在は退社し、講演やコンサルティングなどフリーランスで活動中。著書に『ママ、死にたいなら死んでもいいよ』(致知出版社)。

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