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こんなに美しく、奥深かったとは――虎屋による類書なしの決定保存版!

ようかん

虎屋文庫/著

2,420円(税込)

本の仕様

発売日:2019/10/30

読み仮名 ヨウカン
装幀 「夜の梅」広瀬達郎(新潮社写真部)/カバー写真、島田隆/ブックデザイン
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 159ページ
ISBN 978-4-10-352951-4
C-CODE 0076
ジャンル 暮らし・健康・料理
定価 2,420円

信長や家康がおもてなしに使い、明治以降は携帯・保存食として重宝されるなど様々に愛されてきた和菓子の雄。羊肉の汁物から現代の煉羊羹に至る変遷を、新説交えて綴る「ようかん全史」や、四季折々、多種多様さを魅せるカラー48頁、全国121の名物羊羹紹介まで。この一冊でようかんのすべて、500年の歴史を持つ虎屋がわかる。

著者プロフィール

虎屋文庫 とらやぶんこ

1973年(昭和48)に創設された株式会社虎屋の資料室。虎屋歴代の古文書や古器物を収蔵するほか、和菓子に関する資料収集、調査研究を行い、展示の開催や機関誌の発行を通して、和菓子情報を発信している。資料の閲覧機能はないが、お客様からのご質問にはできるだけお応えしている。ホームページで歴史上の人物と和菓子のコラムを連載中。著作に『和菓子を愛した人たち』(山川出版社)。

菓子資料室 虎屋文庫 | 株式会社 虎屋 (外部リンク)

書評

最強のマリアージュが生まれた

橋本麻里

 子供の頃から甘いものが好きで、という思い出を楽しそうに語る方々は、私から見れば「銀の匙をくわえて生まれてきたスイーツエリート」だ。甘いものが苦手で、おやつといえば果物と煎餅、という時代を経て、憧れ(?)の和菓子を美味しく食べられるようになったのは、20歳も過ぎてからのこと。私にとって甘味は、ただ夢中で味わうものではなく、「分析的に食し、素材や製法、文化的背景まで理解してはじめて美味しいと結論づけられる」対象らしい。
 そういう意味で、和菓子の象徴であるようかんは、ただ食べるだけでなく、その起源と変遷、製法、地域差にいたるまで、探求し語り尽くすに足る対象であり、最古にして最高峰の菓子商の膝下にあって、膨大な史料と専門の研究員を擁する虎屋文庫以上に、その任にふさわしい者はいない。そう、ようかん×虎屋文庫という最強のマリアージュによって生まれたのが、本書なのだ。
 道明寺羹(もち米を加工した道明寺粉と寒天を合わせたもの)や琥珀羹(煮溶かした寒天に砂糖を加えて固めたもの)を駆使し、水や光をイメージさせるようかんのバリエーションや、江戸時代に描かれた菓子見本帳の色鮮やかな絵図など、黒くて四角くて小豆の味で……というようかんへの先入観を払拭するビジュアルは、もちろん見どころのひとつ。だが私たちの「ようかん」観を本当に塗り替えてしまうのは、ようかんの歴史を、史料をもとに精密に検証しつつも空白部分を推理で埋め、ようかん成立の過程を追う「ようかん全史」の章なのだ。
 中国の料理である羊肉の羹(汁物)を、日本人留学僧が点心(食間に摂る軽食)のひとつとして故国へ伝えたものがルーツだから「羊羹」。それが日本の禅宗寺院で精進料理に変じ、やがて菓子へ、とはようかんの起源話として必ず引かれるエピソード。それにしても現代の我々が親しんでいるようかん(=煉りようかん。小豆の粉・砂糖を寒天で煉りかためたもの)と、羊肉の汁物とでは、あまりにかけ離れているのではないか。一方、上生菓子の生地として欠かせない「こなし」(あんに小麦粉と寒梅粉を加えて蒸し、砂糖を加えながら手でもみこんだもの)を、虎屋ではなぜか「羊羹製」と呼ぶ。こなしと煉りようかんでは製法がまったく異なるのに、なぜそう呼び習わしてきたのか。
 本書を読む以前から、私の中にもようかんをめぐる疑問がいくつもあった。それが中世の武家の饗宴や茶会記の、ていねいな検証の記述をたどるうちに、あるものは解かれ、あるものは新たな疑問を呼び起こし、これまでとは異なるようかんの、いや和菓子の歴史の鳥瞰図が、ぼんやりと姿を現し始めてくるのだ。
 ミステリーのネタばれのようなものなので、核心部分への言及は遠慮しておこう。だが、それぞれの時代に「ようかん」と呼ばれた食べものがあり、その変遷の過程で試みられた多彩な製法や形態が、和菓子の歴史を豊かにしていったことは間違いない。いや、もしかすると、和菓子の歴史の根幹にようかんがある、とさえ言えるのかも。ここまでずっと、羊羹ではなく「ようかん」と書いてきたのは(本書のタイトルからしてそうなのだが)、そんなふうに長い時間の中で、味や姿を自在に変えてきた食べ物を、狭い定義の中に押し込めたくないからだ。
 保守本流の和菓子。「あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって」、と谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』に書いた、これ以上変えるところのない、完璧な――完成され尽くしたように思える食べ物。だが、それすらいずれまた、必ず変化する。ようかんは未来に対して開かれている、と確信できる。
 過去を学ぶことは、豊饒な未来を描くことにつながる。優れた歴史書は必ずそんなふうに、読者を未来へ向き合わせてくれるものだが、本書もようかんの過去から現在を緻密にたどることで、ようかんの未来を予言しているように思えるのだ。

(はしもと・まり ライター・編集者)
波 2019年11月号より
単行本刊行時掲載

目次

はじめに
【見る】
I ようかんって素敵だ!
II 菓子見本帳
III ようかんギャラリー
IV 武井武雄の世界
V 全国のようかん
VI ようかんを楽しむ
VII 虎屋のようかん
【読む】
第1章 ようかん全史
第2章 ようかん好きは語る
第3章 原材料について
第4章 虎屋のようかんの歴史
第5章 全国のようかん
ようかんQ&A
全国のおいしいようかん
おわりに
ようかん年表
出典|主要参考文献

『ようかん』試し読み

はじめに

日本人が長らく愛してきた和菓子の代表、それが「ようかん」だ。 あずき色の直方体のものを多くの人が思い浮かべるだろうが、実は色も形も多種多様。主な材料にしても、小豆だけではなく、野菜や果物、各地の特産物を使ったものもある。その上、蒸したり、煉ったりと製法の違いもあり、調べれば調べるほど奥が深い。魅力的なようかんの世界を旅してみよう。

Ⅰ ようかんって素敵だ!

四季を伝える――花鳥風月をめでる喜び。色彩豊かに時節を表す虎屋のようかんをご紹介。

藤の棚
藤の棚
紫色は、古くより高貴な色とされた。平安時代の貴族たちが花盛りの藤の下で、雅やかな宴を楽しむ様子は『源氏物語』にも見られる。「藤の棚」は緑の煉ようかんと、白、紫の道明寺羹で、藤棚に房をなして咲き誇る花を意匠化している。

 意外に思われるかもしれないが、ようかんには季節を映すものがある。たとえば、春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は雪といった自然風物が題材になり、「桜の里」「水の宿やどり」など、日本語の奥深さを感じさせる名前(めい)がつけられる。
 表現として、桜や楓、月など、わかりやすいモチーフを断面に見せるようかんもあるが、ここで注目したいのは一見何を表しているかわからないような抽象的なもの。
 楽しみ方のキーワードになるのが、「見立て」だ。見立てとは、あるものを、共通点をもつ別のものになぞらえること。わかりやすい例では、日本庭園があげられるだろう。白砂を水の流れ、池を海と見なすなど、想像力を使って鑑賞する。
 ようかんの場合は色が重要といえ、紅は花、黄は月、緑は若草、白は雪などに見立てられる。
 思い出すのは『源氏物語』に描写されるような王朝の人々の衣装だ。「十二単」という言葉があるように、当時は重ね着スタイルで、その配色には、四季の風情が取り入れられていた。表地と裏地の色の組み合わせや、衣服数枚を重ねた場合の袖先、襟元、裾に見られる複数の色に、「 こうばいがさね(重)」や「初紅葉」などの名前をつけ、色合いから名歌を思い起こすなど、知的な遊戯を楽しんでいたのである。この「かさね(襲・重ね)のいろ」(衣服の色使い)を思わせる美意識が、ようかんにも受け継がれているのだ。

水の宿やどり
水の宿
夏には、小川のせせらぎや海辺の波音で涼を感じたり、打ち水で暑さをやわらげたりと、水がやすらぎを与えてくれる。「水の宿」は、白道明寺羹と青琥珀羹で流水を表現。陽に照らされ、きらめく渚や泉を思わせる。

 素材や製法をいかした見立てもある。どうみょうかん(もち米を加工した道明寺粉と寒天をあわせたもの)で野山を彩る花や降りしきる雪を、はくかん(煮溶かした寒天に砂糖を加え、固めたもの)で月の光や涼やかな水を思わせるという具合だ。これらとようかんを組み合わせることによって、桜が満開の山やきらめく流水など、多様な景色を表すことができる。
 ここで紹介する四季のようかんはほんの一部に過ぎない。デザインは無限にあり、日本人が愛してやまない自然の美しさに思いを馳せながら、折々にぜひ味わっていただきたい。

【お読みいただく際に】
本書『ようかん』は、【見る】ページ(写真満載のカラー48頁)と【読む】ページに分かれております。この「試し読み」では、冒頭の【見る】ページから、「はじめに」と「Ⅰ ようかんって素敵だ!」の冒頭部分をご紹介いたします。さらに続く多種多様ぶりを、本書でお楽しみください。なお、掲載の虎屋商品は通常商品だけでなく、期間限定品や終売品、非売品も含まれるのでご注意ください。(写真提供、虎屋)

つづきは書籍版『ようかん』で。購入はコチラ

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