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賢明すぎる読者諸君に告ぐ――
これは伝説のミステリ奇書である。

挑戦者たち

法月綸太郎/著

2,420円(税込)

本の仕様

発売日:2016/08/31

読み仮名 チョウセンシャタチ
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 214ページ
ISBN 978-4-10-350221-0
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 2,420円

こんな本、ありか!? パロディありクイズあり迷路あり。レーモン・クノーに触発されて、古今東西の名作のエッセンスに彩られたミステリ万華鏡。ブッキッシュで過剰な仕掛けと洒脱な文体遊戯でマニア悶絶。「さて、この本の面白さが諸君にわかるかな――」。博覧強記のミステリ作家が放つ、これが究極の「読者への挑戦状」だ!

著者プロフィール

法月綸太郎 ノリヅキ・リンタロウ

1964年松江市生まれ。京都大学法学部卒業。1988年、『密閉教室』でデビュー。2002年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門、2005年『生首に聞いてみろ』で第5回本格ミステリ大賞受賞。他著に『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』『キングを探せ』『ノックス・マシン』『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』など多数。

書評

抱腹絶倒、驚天動地の九十九変奏

大森望

「必要な情報はすべて出揃った。合理的に推論すれば、誰でも必ず真犯人を特定できるはず。読者諸君の健闘を祈る」
 本格ミステリを読んでいると、物語の終盤に来て、こんな感じのメッセージが突然はさみこまれることがある。これが“読者への挑戦”というやつ。見たとたん、よし、絶対犯人を当ててやると奮い立つ人もいれば、めんどくさいよとげんなりする人もいるでしょうが、本格ミステリの華というか、小説であると同時に論理パズルであることを高らかに宣言する刻印みたいなもんですね。本格なら必ず入ってるというわけでもないが(率で言えばむしろ少数派)、エラリー・クイーンの国名シリーズを筆頭に、高木彬光『人形はなぜ殺される』、島田荘司『占星術殺人事件』、有栖川有栖『双頭の悪魔』、綾辻行人『鳴風荘事件』など、読者に“挑戦”する名作は数多い。この“読者への挑戦”を九十九通りのスタイルで変奏するという難題に挑戦したのが、本書『挑戦者たち』。
 作中の架空書評「97 不完全な真空」で言及されるとおり、これは“フランスの前衛作家レーモン・クノーが書いた『文体練習』の推理小説版”。さらに引用すると、本書は、“最強王者クノーの対戦スタイルから多くを学びながら、その拳をピンポイントに連打して伝統的な本格ミステリ形式をノックアウトしようと目論んでいる。「読者への挑戦」という針穴を通して、謎解き小説の全体像をあべこべに映し出す「カメラ・オブスクラ」的なメタフィクションと呼んでもいい”。
 うわあ、やっぱりめんどくさそう……と思うかもしれませんが、クノーの原典がそうであるように、奇想天外なパロディや愉快なパスティーシュ、楽しい仕掛けが満載されていて、ミステリマニアならずとも大笑いできる。和田誠川端康成雪国』の冒頭をいろんな作家の文体で書き分けた名作『倫敦巴里』とか、2ちゃんねるなんかで今も人気が高い文体模写スレとか、そういうのの本格ミステリ版だと思えばいい。
 実際、本書の中には、「わしら この本かいた さく者や」と名乗るもの(「5 和文タイプ」)や「おれがむかし読者だったころ/弟は毒蛇/妹は独居者だった」(「85 昭和芸能史」)と語り起こすものがあって中年読者なら懐かしさに浸れるし、川柳、電報文、いろは四十八文字から、QRコード(スマホで読みとると“読者への挑戦”が表示される)まで多種多彩。わりとくだらないのが基本です。
 かと思うと、ボルヘスを下敷きにした「20 幻獣辞典」では、“〈読者への挑戦〉は書物の中にひそむ妖魔で、(F・R・ストックトンの疑わしい報告によれば)女と虎が半分ずつ混じり合った姿をしている。その名の通り、物語の読者に謎をかけ、正しく答えられなかった者は失明してしまう”と、いかにももっともらしく解説されたりするが、そういうパスティーシュのみならず、実在の作品を俎上に載せた本格ミステリ論だったり、架空作家の架空ミステリの(レム『完全な真空』的な)あらすじ紹介だったり、融通無碍にして変幻自在。たとえば「29 最多挑戦記録」では、“読者への挑戦”ページに広告を掲載するというアイデアを思いついたミステリ作家の涙ぐましい“挑戦”過程が紹介されて大爆笑。
 一見、ランダムに配置されているように見える“挑戦”群の中にあって、特定の作家・編集者・作中人物がくりかえし登場、点と点をつなぎあわせると、彼らをめぐる物語がぼんやり浮かび上がってくる……というような凝った趣向も用意されている。
 大人気を博した『ノックス・マシン』所収の短編「論理蒸発」では、クイーンの『シャム双生児の謎』(国名シリーズなのに“読者への挑戦”が存在しない)を題材に、物語平面上の特異点である“読者への挑戦”が(ブラックホールが蒸発するようにして)蒸発した結果、電子書籍の“炎上”を招いたのでは――という奇想がフィーチャーされていたが、本書では“読者への挑戦”のまさに特異点的な性格が徹底的に探求される。その意味では、じつに法月綸太郎らしいスリリングな本格ミステリ論だが、ベタすぎるギャグ(馬鹿には見えない挑戦状とか)や定番のタイポグラフィックものを迷彩に、そうした野心的な挑戦を目立たなくする戦略がうまい。予備知識ゼロの読者でもちゃんと楽しめるのでご心配なく。たいへんな手間暇がかかっているはずなのに、読者にはその苦労のあとをみじんも見せない、抱腹絶倒驚天動地の傑作。


(おおもり・のぞみ 書評家)
波 2016年9月号より

目次

1 読者諸君に告ぐ
2 児童向け
3 慇懃無礼
4 機械翻訳風
5 和文タイプ
6 プロバティオ・ディアボリカ
7 イントロ・クイズ
8 J・Jの奇妙な挑戦
9 挑戦は果てしなく
10 一四〇字
11 こんな「読者への挑戦」はイヤだ!
12 ラジオドラマ「クエリー・ルーイン」の冒険
13 お詫びと訂正
14 ♪音楽的に
15 ケブンッリジ ジネェーレタ
16 渦巻き
17 否定的接頭辞
18 草葉の陰から
19 鶏と卵
20 幻獣辞典
21 お月様に挑戦された話
22 二代目フゴゥ刑事
23 十戒
24 正解率百パーセント
25 挑戦状遅延のお知らせ
26 編集者への手紙
27 使用上の注意
28 パット・マガー症候群
29 最多挑戦記録
30 猫は読者に挑戦する
31 QED
32 警部補・団藤光三郎
33 コピペ改変「誰かの生首」
34 作者への挑戦
35 川柳
36 朗読犯人当て
37 義足殺人事件
38 成功哲学
39 前回までのあらすじ
40 解決の番人
41 挑戦された読者(Challenged Reader)
42 挑戦状アレルギーの弁
43 円滑なストーリーテリングを妨げる十二の障害
44 挑戦状盗難事件、または名探偵オルメスの冒険
45 電報文例
46 分類マニア
47 牛耕式
48 いろは四十八文字
49 感嘆符
50 口語自由詩
51 これより先、無法地帯
52 犯人当罪ニ関スル件(犯人当て禁止令)
53 瓶詰の挑戦状
54 推理の手引き《袋とじ解説》
55 販売促進術
56 義理チャレ
57 アメリカン・ジョーク
58 皇帝の新しい服
59 友だちから聞いた話
60 編者曰く
61 E・A・ポーを讃えて(Ode to Poe)
62 些細な事柄
63 姿見を通して
64 東洋思想
65 ヒルベルト・ホテルの殺人
66 実況中継
67 リポグラム(あ段)
68 Challenge to the Barcode Reader
69 暴走万葉仮名
70 待ちぼうけ
71 跡地
72 反哲学的コラージュ
73 天地無用
74 華氏451度
75 章見出し
76 口述筆記
77 犯人決定総選挙
78 黄金比率
79 スラッシュ/クランチ
80 抜き打ちテストのパラドックス
81 翔び立つ凶鳥
82 挑戦状の書き方
83 先行テスト
84 経験則
85 昭和芸能史
86 ゲームブック
87 欠礼
88 アンケート「この挑戦状がすごい!」
89 コーヒーブレイク
90 堪忍袋
91 つぎの夜につづく
92 ムース警部、挑戦に応じる
93 画竜点睛
94 モニター募集
95 合作者が多すぎる
96 問いそれ自体が答えであるような問題
97 不完全な真空
98 最後の一撃
99 謝辞
おもな引用・参考文献

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

法月綸太郎「プレミアム挑戦状」正解発表

法月綸太郎『挑戦者たち』の初版本限定「プレミアム挑戦状」に、多数のご応募をいただきまして、ありがとうございました。

正解は、ソランジュ・マリオ『とどのつまりは何も無し』
    (沼野充義訳/国書刊行会)でした。

ご応募いただいた方のほとんどが正解で、読者の皆さまの博識に敬服しております。また、応募ハガキにさまざまなご感想、メッセージをいただき、著者の法月さんも編集部も大変喜んでおります。これから正解者全員に宛てて、直筆ミニサインを書いていただきますので、お手元に届くのを楽しみにして下さい。なお、正解者多数のため、しばらく時間がかかりますことをご了承下さい。

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