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ムーミンを生んだ芸術家 トーヴェ・ヤンソン

冨原眞弓/著 、芸術新潮編集部/編

1,980円(税込)

発売日:2014/04/16

  • 書籍

あの白い不思議ないきもの誕生のひみつ。

絵画から漫画、風刺画、絵本、小説まで、あらゆるジャンルで才能を発揮し、世界中の人々に愛されるキャラクター“ムーミン”を創り出したアーティスト、トーヴェ・ヤンソン。その創作世界をトーヴェ研究の第一人者が案内する決定版。アトリエや毎夏を過ごしたクルーヴ島などフィンランドのゆかりの地も辿る。生誕百年記念刊行。

目次
Hemligheter av muminberattelserna
ムーミン物語のひみつ
白と黒のユートピア 原寸原画で読むムーミン物語
ムーミン谷ってどんなところ?
ムーミン物語 はじまりと終りの秘密
Mangfasetterad Tove
さまざまなトーヴェ
生い立ちについて教えてください
商業デビューは「挿絵画家」?
本職は「画家」だと思っていた?
絵本作家の腕前は?
ムーミンがマンガに!?
おとな向けの小説を書きはじめたのはなぜですか?
Folja med Tove
トーヴェの足跡をたどって
フィンランドの島々とヘルシンキ
アトリエ 海の見える部屋
クルーヴ島(ハル) 海のうえの小さなユートピア
ペッリンゲの島々 ものがたりが生まれた場所
ヘルシンキ 生涯を過ごした街
Tove och jag
トーヴェ・ヤンソンと私
カメラ嫌いの姉 ペル・ウロフ・ヤンソン
雷、のち晴れ 冨原眞弓
年譜 彫刻家の娘の生涯
著作リスト ムーミンとトーヴェ・ヤンソンの本

付録 ムーミン物語 キャラクター大集合!

書誌情報

読み仮名 ムーミンヲウンダゲイジュツカトーヴェヤンソン
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 128ページ
ISBN 978-4-10-335651-6
C-CODE 0071
ジャンル 評論・文学研究
定価 1,980円

書評

波 2014年5月号より あの白い不思議ないきもの誕生のひみつ

新潮社生活文化図書部

国内外で老若男女を問わず大人気のムーミンですが、その出会いは世代によりそれぞれかもしれません。日本では60~70年代と90年代にアニメ化され、いずれも大変な人気を博しました。またポーランド製のパペットアニメも放映され、岸田今日子さんの吹き替えが日本でのムーミン物語のイメージを印象付けました。最近では食器から文具までさまざまな生活雑貨にその絵柄を見つけることができ、さらには車のCMに登場したり、大学のマスコットにまでなったりと、キャラクターとしての活躍の幅は広がるばかりです。
でもそもそもこの“ムーミン”というキャラクターは一体どのように誕生したのか、ご存知でしょうか。そしてこのムーミンを生み出したフィンランド生れの女性トーヴェ・ヤンソン(1914~2001)が、児童小説「ムーミン物語」シリーズにとどまらず、絵画、マンガ、小説、風刺画などと幅広いジャンルで活躍したマルチアーティストだったことはあまり知られていないかもしれません。
たとえば、ムーミン物語はフィンランドの作家の作品なのにスウェーデン語で書かれていたこと、また児童文学者と思われがちなヤンソンですが、本人は生涯「画家」と自任、油彩からフレスコ画までたくさんの絵画作品を遺していたことはご存知ですか? さらに新聞に漫画連載を持ったり、凝りに凝った絵本を製作したり、後年は児童小説を卒業、いわゆるおとな向けの小説の執筆に勤しんでいたり……とその創作世界の幅広さと作品のクオリティはムーミンだけに注目するにはおしいアーティストなのです。
本書はそんなトーヴェ・ヤンソンの生き方とアーティストとしてのさまざまな貌を、ヤンソン研究の第一人者である冨原眞弓さんが貴重な原画や資料とともにひもといてゆくトーヴェ・ヤンソン入門の決定版ともいえる一冊です。
なかでも目玉のひとつは冒頭に原寸サイズで掲載したムーミン物語の挿絵原画。新たに冨原さんに訳し下ろして頂いた「ムーミン物語」の引用とともに、掌サイズのその世界からヤンソンの筆遣いを感じて頂けるでしょう。他にも若い頃の挿画の仕事やスケッチ類、漫画の下絵、壁画などヤンソン作品集としても楽しんで頂ける内容となっています
また創作の原点ともいえるふたつの場所、亡くなるまでの50年以上を過ごしたヘルシンキのアトリエと毎夏を親友や家族と過ごしたフィンランド湾沖の孤島クルーヴ島(ハル)も写真とともにたっぷりとご紹介しています。
巻末にはムーミン物語に登場するほぼすべて、82匹(?)をまとめたキャラクター図鑑を付録としてつけました。そのユニークでかわいらしい造形もさることながら、多種多様なキャラクターの個性にも改めて驚かされます。皆欠点を抱えつつも、自分らしく生きている姿はトーヴェ・ヤンソンの人間に対する眼差しを思わずにはいられません。
今年はトーヴェ・ヤンソンの生誕100年にあたり、大きな展覧会が二つ開催され、ヤンソンの原画や作品がたくさん来日、その鑑賞のお供にも最適の一冊となっています。

著者プロフィール

冨原眞弓

トミハラ・マユミ

1954年、兵庫県生まれ。上智大学外国語学部卒業後、フランス政府給費留学生としてソルボンヌ大学で哲学博士号取得。1989年にヤンソン作品に出会い、原著を読むためにスウェーデン語を習得。以後、ヤンソン作品の翻訳・研究を多数手掛ける。聖心女子大学哲学科教授。主なヤンソン関連の著書に『ムーミンを読む』『ムーミン谷のひみつ』(ともに筑摩書房)、『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界』(青土社)、訳書に「卜一べ・ヤンソン・コレクション」「ムーミン・コミックス」(ともに筑摩書房)など。シモーヌ・ヴェイユの翻訳・研究も多く手がける。訳書に『根をもつこと』『自由と社会的抑圧』(ともに岩波文庫)、『シモーヌ・ヴェイユ選集』(みすず書房)など。

芸術新潮編集部

ゲイジュツシンチョウヘンシュウブ

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