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この味を忘れることは決してないだろう──運命の料理をめぐる七篇の物語。

あつあつを召し上がれ

小川糸/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2011/10/31

読み仮名 アツアツヲメシアガレ
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 175ページ
ISBN 978-4-10-331191-1
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2012/11/30

母親から丁寧に伝えられたおみそ汁、離れて行く恋人と食べる松茸料理、何も食べられなくなったお祖母ちゃんに食べてもらえた思い出の一品……。ある時、ふいに訪れる、奇跡のような食卓。大好きな人と一緒に食べる歓び、幸福な食事の情景を巧みにくみこんで、ありきたりでない深い感動を誘う、七つのあたたかな短篇小説。

著者プロフィール

小川糸 オガワ・イト

1973(昭和48)年生れ。著書に小説『食堂かたつむり』『喋々喃々』『ファミリーツリー』『つるかめ助産院』『リボン』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』、絵本『まどれーぬちゃんとまほうのおかし』、エッセイ『ようこそ、ちきゅう食堂へ』『こんな夜は』『たそがれビール』『犬とペンギンと私』などがある。『食堂かたつむり』は、2011(平成23)年にイタリアのバンカレッラ賞を、2013年にはフランスのウジェニー・ブラジエ小説賞を受賞した。

糸通信 (外部リンク)

書評

波 2011年11月号より 思いがけない魅力に満ちた「美食」の小説

松田哲夫

小川糸さんの小説の魅力と言えば、なんといっても料理やお菓子など食べ物の描写が活き活きとしていることでしょう。
小川さんの鮮烈なデビュー作『食堂かたつむり』は、タイトルが象徴しているように、全編食べ物の描写づくしとでも言いたくなる小説でした。例えば、ザクロカレーに関する描写だけでも、思い出すだけで口につばきが溜まってきます。すべてを失い、ふるさとに帰った倫子は、地元の食材を使った料理を提供する「食堂かたつむり」を始めます。その開店をサポートしてくれる熊さんへの感謝の気持ちを込めて、イラン人に教わったザクロカレーを作ることにします。食材を揃えて調理をしていく描写がきめ細かく綴られていくのですが、「ザクロカレーの甘酸っぱい匂いが、厨房いっぱいにふくらんでいた」に到るまで四ページ以上を費やしているのでした。
第二作『喋々喃々』も食べ物シーン満載のお話でした。谷中でアンティークきもの店を営む栞は許されざる恋に陥っていくのですが、その折々の逢瀬には美味しい料理やお菓子が華を添えています。栞が恋人と湯島で鳥鍋を賞味する場面などは、読んでいるだけでホカホカと温まってくるようでした。
その小川糸さんが、再び食べ物小説を手がけたのが『あつあつを召し上がれ』です。それぞれ独立した短編小説が七編収められていて、最初の五編は人生の節目に食べ物が関わってくるお話です。認知症が進んで施設にいるおばあちゃんにかき氷を食べさせようとする孫娘(「バーバのかき氷」)。中華街で「一番汚い店」でプロポーズする若い恋人たち(「親父のぶたばら飯」)。能登に離婚旅行に出かけた中年夫婦(「さよなら松茸」)。父子家庭から嫁に行く日に母親の料理を思い出す娘(「こーちゃんのおみそ汁」)など。
さすが小川さん、食べ物の描写はとってもチャーミングで、時にはエロチックにすら感じられます。例えば、「親父のぶたばら飯」で「しゅうまい」を食べるシーンはこうです。「アラびきの肉それぞれに濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する。」そして「どうして本当に美味しい食べ物って、人を官能的な気分にさせるのだろう。」という感想を挟んで、「ふかひれのスープ」は「優しく優しく、まるで野原に降り積もる雪のように、私の胃袋を満たしていった。」しめの「ぶたばら飯」になると「もう、感想を言葉にする余裕すらなく、とにかく目の前の食べ物と早く一緒になりたいようなもどかしい気持ちで、何度も何度も白いレンゲを口に運ぶ」ことになるのです。
小川さんの小説の凄さは、読者をほのぼのとした気分にさせておいて、思いがけない大技を真っ正面から仕掛けてくるところです。『食堂かたつむり』の時も、料理を作り、味わい、楽しむお話が続き、これはしみじみと人生と食べ物を味わう作品なんだと思っていると、とんでもないうっちゃりをかけられました。でも、その大胆な展開が、より深い感動へとつながっていくのでした。
さて、この短編集では、六編目で破調がきます。「ポルクの晩餐」は豚と同棲している男が、心中しようとパリにやってきて、最後の晩餐とばかりに豪遊します。小川さんにしては相当にぶっ飛んだ話です。
そして最終編「季節はずれのきりたんぽ」では、出だしは、五編目までのトーンに戻っています。「母が大きな鍋の蓋を開けると、ふわぁっと湯気が広がって、梅雨時の湿った空気に鶏ガラスープの爽やかな香りが紛れていく。」こういう調子です。ところが小川さんは大胆にも、クライマックスでそれまでの美食小説の流れとまったく違う方向に物語をもっていくのです。下手すれば、それまでの料理が台無しになるところですが、結果はまったく逆でした。ビターテイストが加わることで、それまでの美味が一際さえわたっていきました。
小川さんの物語調理法の妙味を堪能させてもらえる逸品、あなたも召し上がれ!

(まつだ・てつお 編集者・書評家)

目次

バーバのかき氷
親父のぶたばら飯
さよなら松茸
こーちゃんのおみそ汁
いとしのハートコロリット
ポルクの晩餐
季節はずれのきりたんぽ

判型違い(文庫)

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