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東海道新幹線 運転席へようこそ

にわあつし/著

572円(税込)

発売日:2014/01/01

書誌情報

読み仮名 トウカイドウシンカンセンウンテンセキヘヨウコソ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-125471-5
C-CODE 0165
整理番号 に-28-1
ジャンル 産業研究、鉄道
定価 572円
電子書籍 価格 638円
電子書籍 配信開始日 2018/07/06

行きは、東京発初代0系「ひかり」号。帰りは、新大阪発最新型N700A「のぞみ」号。運転席の臨場感、とっておきのウラ話。これであなたも新幹線運転士!

元新幹線運転士が、あなたを運転台にご招待。まずは、35年前の東京駅から初代0系「ひかり」号で出発。懐かしのエピソードやウラ話に耳を傾けつつ、桜咲く東海道をご一緒に。復路は現在の新大阪駅より、最新型N700A「のぞみ」号で発進します。日本が誇るハイテク装備やプロフェッショナルから見た車両発達史など、初公開の話題も満載。どなた様も、お乗り遅れなさいませんように!

目次
はじめに
東海道新幹線歴代車両アルバム
新幹線の基礎知識
新幹線の歴史
新幹線を支えるテクノロジー
東海道新幹線路線図
第1部 0系新幹線でゆく、東京─新大阪(昭和53年春の某日)
出 勤
乗務開始
乗り継ぎ交代
発車準備
便乗運転士登場
ドア・オープン
東京駅発車
東京第一運転所
新幹線と人身事故
満員と苦情
花火大会特別ダイヤ
新幹線町
虫との闘い
コーヒーの出前
浜松通過
お召し列車
さまざまなトラブル
坂野坂の「幽霊」
名古屋駅――停車の極意
新たなる便乗者
自然との闘い
近江平野を走る
京都駅停車
終着駅・新大阪へ
第2部 N700Aでゆく、新大阪─東京(平成25年春の某日)
朝食と1人乗務
最新型新幹線、登場
N700A、発車
京都駅――最新停車テクニック
車両通告券
さまざまな乗客
すれ違い問題
関ヶ原今昔
ヨーロッパ高速鉄道事情
ドクター・イエロー
名古屋駅と請願駅
新幹線車両談義
とんびの激突
無人列車事件
女性運転士と肩たたき
東京駅へ――ポッポ屋の旅路

書評

波 2014年1月号より 運転席という名の舞台裏

有栖川有栖

物心がついた時からパソコンが身近にあった世代を〈デジタル・ネイティヴ〉などと称する。一九五九年生まれの私は、各家庭にテレビが普及した時代の生まれなので〈テレビ世代〉と呼ばれてきたが、こういう呼称は当人にとっては「それがどうした?」で、あまり意味がない。
幼少期に世の中に広まり始めたものでネーミングされてこそ、「ああ、まさしく」と実感が湧く。私は、自分のことを〈新幹線世代〉だと思っている。東京オリンピック開幕に合わせて東海道新幹線が開業したのは五歳の時。「乗ってみたいなあ」と憧れ、それがごく日常的な当たり前の存在になっていくのを見続けてきた、という意味で。
また、次世代の高速鉄道・リニアモーターカー(こちらも新幹線と呼ばれるそうだが)とは縁が薄そうな点でも、自分が生きたのが新幹線の時代であると感じる。東京・名古屋間をリニアが走るようになるのは二〇二七年の予定だからそれには乗れそうだが、私(大阪在住)の地元にやってくるのは、その十八年後。生きていたとしても、東京に行く用事はあるまい。
というわけでリニアへの興味は減退し、新幹線世代=新幹線チャイルドとして人生をまっとうすることになった。幼い日に憧れ、青年期以降は何百回となくお世話になってきた新幹線に、私は愛着と感謝の念を抱いている。
そんな私にとって、『東海道新幹線 運転席へようこそ』は、ご馳走のような一冊と言える。著者のにわあつしさんは、新幹線の運転士を長年にわたって務め、国鉄退職後はライター・写真家としてご活躍中で、新幹線ファンを大喜びさせた『新幹線の運転』(副題は「運転士が見た鉄道の舞台裏」)の著者でもある。
専門的なものから初歩的な読み物まで、新幹線に関する本は山ほどあり、現役の運転士が書いた本も出ている。「まだ書くことがあるの?」と言いたくなるが――あるんですね。さすがに新幹線は奥が深い。
本書は二部構成になっていて、第1部は「0系新幹線でゆく、東京―新大阪(昭和53年春の某日)」、第2部が「N700Aでゆく、新大阪―東京(平成25年春の某日)」。新旧二つの時代・二つの車種での運転を詳細に紹介してくれる。それはもうリアルな筆致で、点呼・乗車から運転士にぴたりと寄り添って、何もかもを見聞きするかのよう。ここまで書いてもいいのかしら、と思うほどだ。乗客から見えないところで、運転士が何を考えてどう列車を操っているのかが克明に描かれており、舞台裏を覗く楽しさにあふれている。
運転の細かなテクニックや心構え、苦労だけでなく、同僚の運転士や車掌、あるいは車内販売員の女性らとの会話がいきいきと紹介されているのも大きな読みどころ。かつて運転席にコーヒーや特製弁当の出前をするサービスがあったとか、在来線を並走する貨物列車が新幹線に対抗してスピードを上げたりしていたとか、「へえ、そんなことが」というエピソードが満載。メカ好き向けの硬派な部分と、人間臭さやぬくもりがうまくブレンドされている。
あまり知られていない人身事故やアクシデントについて書かれているのも新鮮だ。JRにすれば内緒にしておきたいことかもしれないが、秘密にしておくことで変な噂や都市伝説を生むよりいいだろう。読んで新幹線への信頼がゆらぐようなことではない。運転士も無気味に感じる〈幽霊トンネル〉の紹介などもあり、幽霊の正体の解説までついているのだからサービス満点。
文中、プシュー、ガラガラガラ、チ~ンといった擬音が頻出するのも面白かった。素朴な表現のようだが、臨場感だけでなく、運転士が音にも神経を集中させていることがよく判る。好奇心に応える打ち明け話集というだけではなく、鉄道マンの矜持が伝わってくる好著だ。
旅に出られない時に家で寝そべって読むのもよし、新幹線に乗りながら読むのもよし。車中で景色と照合しながら読めば、「おっ。そろそろノッチを7に上げるな」などと運転席の情景を想像して、にやにやしてしまいそうだ。新幹線チャイルドだけでなく、日本が誇るこの超特急に興味のあるすべての方にお薦めしたい。

(ありすがわ・ありす 作家)

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著者プロフィール

にわあつし

ニワ・アツシ

1951(昭和26)年静岡県生れ。高校卒業後、日本国有鉄道に入る。分割民営化(1987年4月)直前まで新幹線の運転士を務めた。退職後は、鉄道と旅行をテーマに、ライター・写真家として活動している。著書に『運転士が見た鉄道の舞台裏 新幹線の運転』がある。ライターとして、『全国フリーきっぷガイド』『おとなの鉄道地図帳』「0系新幹線の時代」「ヨーロッパ列車の旅」などに寄稿。写真家としては、『カラーブックス日本の電車』『世界の鉄道』『別冊時刻表保存版 世界列車大カタログ』『写真絵本 しんかんせんとブルートレイン』「コンパス時刻表」を手がける。旅ジャーナリスト会議会員。

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