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新編 宮沢賢治詩集

宮沢賢治/著

605円(税込)

発売日:1991/08/01

書誌情報

読み仮名 シンペンミヤザワケンジシシュウ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-109207-2
C-CODE 0192
整理番号 み-2-7
ジャンル 詩歌
定価 605円

雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ……。今だからこそ心に刻みたい賢治が残した力強い言葉。

宮沢賢治の詩は、その圧倒的に豊富なイメージと斬新な語彙で、人々に新鮮な驚異を与えてきた。三十七年を多彩に生き急いだ彼は、常に自己の内奥に修羅を見据える。その熱いモノロオグは、山野を跋渉し森羅万象と交響して生起した心象のスケッチから生命を得、たゆまぬ推敲・改作をへて眼前の形に昇華されたのだ。賢治の詩の世界のエッセンスとして慎重に抽出された132篇を収録。

目次
『心象スケツチ 春と修羅』より

屈折率 (一九二二、一、六)
くらかけの雪 (一九二二、一、六)
恋と病熱 (一九二二、三、二〇)
春と修羅 ((一九二二、四、八))
春光呪詛 (一九二二、四、一〇)
 (一九二二、四、二〇)
真空溶媒 ((一九二二、五、一八))
蠕虫舞手(アンネリダタンツエーリン) (一九二二、五、二〇)
小岩井農場 (一九二二、五、二一)
 (パート一)
 (パート二)
 (パート九)
報告 (一九二二、六、一五)
岩手山 (一九二二、六、二七)
高原 (一九二二、六、二七)
原体剣舞連 ((一九二二、八、三一))
東岩手火山 (一九二二、九、一八)
永訣の朝 ((一九二二、一一、二七))
松の針 ((一九二二、一一、二七))
無声慟哭 ((一九二二、一一、二七))
白い鳥 (一九二三、六、四)
青森挽歌 (一九二三、八、一)
風景とオルゴール (一九二三、九、一六)
一本木野 (一九二三、一〇、二八)
冬と銀河ステーシヨン (一九二三、一二、一〇)
「春と修羅 第二集」より

 空明と傷痍 一九二四、二、二〇
一六 五輪峠 一九二四、三、二四
一九 晴天恣意 一九二四、三、二五
〔一九〕 塩水撰・浸種 一九二四、三、三〇
二五 早春独白 一九二四、三、三〇
六九 〔どろの木の下から〕 一九二四、四、一九
七五 北上山地の春 一九二四、四、二〇
一一八 函館港春夜光景 一九二四、五、一九
一五二 林学生 一九二四、六、二二
一五六 〔この森を通りぬければ〕 一九二四、七、五
一五八 〔北上川は熒気をながしィ〕 一九二四、七、一五
一六六 薤露青 一九二四、七、一七
一七九 〔北いっぱいの星ぞらに〕 一九二四、八、一七
三〇四 〔落葉松の方陣は〕 一九二四、九、一七
三一三 産業組合青年会 一九二四、一〇、五
三一四 〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕 一九二四、一〇、五
三二九 〔野馬がかってにこさへたみちと〕 一九二四、一〇、二六
三三〇 〔うとうとするとひやりとくる〕 一九二四、一〇、二六
三三八 異途への出発 一九二五、一、五
三四三 暁穹への嫉妬 一九二五、一、六
三五六 旅程幻想 一九二五、一、八
四〇一 氷質の冗談 一九二五、一、一八
四一一 未来圏からの影 一九二五、二、一五
五〇八 発電所 一九二五、四、二
三三三 遠足統率 一九二五、五、七
三三七 国立公園候補地に関する意見 一九二五、五、一一
三六九 岩手軽便鉄道 七月(ジャズ) 一九二五、七、一九
三七二 渓にて 一九二五、八、一〇
三七五 山の晨明に関する童話風の構想 一九二五、八、一一
三八三 鬼言(幻聴) 一九二五、一〇、一八
三八四 告別 一九二五、一〇、二五
四〇三 岩手軽便鉄道の一月 一九二六、一、一七
「春と修羅 第三集」より
七〇六 村娘 一九二六、五、二
七〇九 春 一九二六、五、二
七一一 水汲み 一九二六、五、一五
七三五 饗宴 一九二六、九、三
七四一 煙 一九二六、一〇、九
七四一 白菜畑
一〇〇三 実験室小景 一九二七、二、一八
一〇一二 〔甲助 今朝まだくらぁに〕 一九二七、三、二一
一〇一九 札幌市 一九二七、三、二八
一〇三三 悪意 一九二七、四、八
一〇五三 〔おい けとばすな〕 一九二七、五、三
一〇七五 囈語 一九二七、六、一三
一〇八二 〔あすこの田はねえ〕 一九二七、七、一〇
一〇二〇 野の師父
一〇二一 和風は河谷いっぱいに吹く 一九二七、八、二〇
一〇八八 〔もうはたらくな〕 一九二七、八、二〇
詩ノート より
七四四 病院 一九二六、一一、四
一〇〇四 〔今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです〕 一九二七、三、四
一〇二四 ローマンス 一九二七、四、二
一〇五三 政治家 一九二七、五、三
一〇五四 〔何と云はれても〕 一九二七、五、三
一〇五六 〔サキノハカといふ黒い花といっしょに〕
一〇七一 〔わたくしどもは〕 一九二七、六、一
 生徒諸君に寄せる
詩稿補遺 より
阿耨達池幻想曲
法印の孫娘
〔こっちの顔と〕
火祭
牧歌
地主
境内
「疾中」より
眼にて云ふ
〔手は熱く足はなゆれど〕
〔丁丁丁丁丁〕
〔風がおもてで呼んでゐる〕
 一九二九、四、二八
「文語詩稿」より
〔いたつきてゆめみなやみし〕
五輪峠
流氷(ザエ)
〔夜をま青き藺むしろに〕
〔きみにならびて野にたてば〕
〔林の中の柴小屋に〕
雪の宿
〔川しろじろとまじはりて〕
〔血のいろにゆがめる月は〕
〔玉蜀黍を播きやめ環にならべ〕

岩手公園
早春
早害地帯
岩頸列
〔鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし〕
巨豚
〔塀のかなたに嘉菟治かも〕
〔腐植土のぬかるみよりの照り返し〕
田園迷信
八戸
〔ながれたり〕
〔まひるつとめにまぎらひて〕
雪峡
国柱会
祭日〔二〕
敗れし少年の歌へる
「三原三部」より
三原 第一部 一九二八、六、一三
「東京」より
浮世絵展覧会印象 一九二八、六、一五
補遺詩篇 より
ある恋
〔雨ニモマケズ〕
小作調停官
〔雨すぎてたそがれとなり〕

春 水星少女歌劇団一行
肺炎
歌曲 より
精神歌
牧歌(「種山ヶ原の夜」の歌〔三〕)
星めぐりの歌
大菩薩峠の歌
注解・解説 天沢退二郎

書評

賢治を胸に、今日も畑へ

藤田智

 家庭菜園を楽しむ人が増えています。私は、大学での授業のかたわら、NHK Eテレの「趣味の園芸 やさいの時間」という番組の講師を務め、全国のみなさんに野菜の育て方を紹介しています。
 小さな頃は、テレビに出演するようになるなんて思いもしませんでした。私の人生がこうなったのは、ある作家との出会いがあったから。それが宮沢賢治です。

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 初めて読んだ賢治の作品は「雨ニモマケズ」でした。冒頭の「雨ニモマケズ 風ニモマケズ……」はあまりに有名です。ただし、私が気になったのは後半の「サムサノナツハオロオロアルキ」という一節でした。「寒さの夏」とは、冷たい風「やませ」による東北地方太平洋側の冷害を指しています。やませが吹くと夏でも気温が上がらず、農作物、とくに熱帯原産の稲は極端に生育が悪くなり、昔から農家を苦しめてきました。
 童話作家・詩人として知られる賢治ですが、出身校は盛岡高等農林学校(現・岩手大学農学部)です。卒業後には花巻農学校で教鞭を執り、その後は自ら設立した羅須地人協会での活動を通し、農家の生活改善に尽力しました。農家に寄り添い、自らも土を耕した賢治は、冷夏がやってくるたびに、心配と絶望で、ほんとうにおろおろ歩いていたと思います。秋田県の農家に生まれた私には、冷害に苦しむ賢治と岩手県の農家の気持ちが痛いほどわかりました。そして、この詩を読んだ瞬間、私も賢治のように「農家や農業のために役立つことがしたい」という思いがふつふつと湧いてきました。
 当然、大学は農学部を志望しました。受験校として選んだのは岩手大学。そう、賢治の出身校です。晴れて合格した私は、名実ともに賢治の後輩となりました。岩手大学の同窓会名簿には、私の名前が、賢治といっしょに載っているんですよ。
 大学在学中にも、賢治にまつわる忘れられない思い出があります。有機化学の試験のとき、答案が埋められなかったので、用紙の裏に「永訣の朝をどう読むか」という設問を書いて論じたことがありました。「永訣の朝」は、賢治が妹トシとの別れをうたった詩で、「あめゆじゆとてちてけんじや」という一節がよく知られています。「あめゆじゅ」とは岩手の方言で雨雪、みぞれのことで、賢治は妹から最後の食事に「みぞれを取ってきてくれ」と頼まれるんですね。詩が進むにつれ、死が迫った妹に対する賢治の思いが高まっていくのがわかります。昔から好きな詩だったので力を入れて論述したら、なんと成績表に「優」がつきました。その教授は賢治研究でも知られる方だったのですが、賢治の出身大学ならではのエピソードだったと思います。

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 宮沢賢治の童話の中で、もっとも有名なのは『銀河鉄道の夜』でしょう。少年ジョバンニがカンパネルラとともに星空を旅する話で、私も繰り返し読みました。作中では「本当の幸せってなんだろう」という問いが繰り返されます。そして、カンパネルラが自らを犠牲にして友を救ったように、賢治にとっての幸せは「人のために生きる」ことだったのでしょう。教育に携わる人間として、私もこの思いを忘れないようにしています。

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注文の多い料理店』もよく知られる童話です。東京から猟にきた二人の紳士が山奥のレストランに入ったところ、逆に山猫に食べられそうになるというあらすじで、ストーリーが秀逸ですね。秋田にはマタギと呼ばれる猟師がいます。昔からの猟師は、生きるために動物の命をいただきました。しかし紳士たちは、楽しみのために狩猟をします。賢治は読者に「命」の大切さを考え、生命に対する畏敬の念を抱いてほしかったのでしょう。
 冒頭には、連れていた猟犬が死んでしまったことについて、紳士が「二千八百円の損害だ」と言い放つシーンがあります。命が、簡単にお金に換算できるのかという賢治の声が聞こえてくるようです。
 大学では農園実習の指導もしていますが、自分で育てるようになると、学生達の野菜へのまなざしが変わってきます。お金で買うことのできる「食材」としての野菜を、自分で育てた「命」として捉えるようになる。土を耕しているうちに、いつの間にか賢治の考えに近づいていくようなんですよね。
 賢治の作品は、読み返すたびに新たな発見があります。この次の銀河鉄道の旅で、イーハトーブの村でどんな出会いがあるか、私は今から楽しみです。

(ふじた・さとし 恵泉女学園大学副学長)
波 2022年5月号より

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

著者プロフィール

宮沢賢治

ミヤザワ・ケンジ

(1896-1933)明治29年、岩手県花巻生れ。盛岡高等農林学校卒。富商の長男。日蓮宗徒。1921(大正10)年から5年間、花巻農学校教諭。中学時代からの山野跋渉が、彼の文学の礎となった。教え子との交流を通じ岩手県農民の現実を知り、羅須地人協会を設立、農業技術指導、レコードコンサートの開催など、農民の生活向上をめざし粉骨砕身するが、理想かなわぬまま過労で肺結核が悪化、最後の5年は病床で、作品の創作や改稿を行った。生前刊行されたのは、詩集『春と修羅』童話集『注文の多い料理店』(1924)のみ。

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