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先立つものは、金。一級史料をもとに軽妙な関西弁で語られる、世紀の事件の舞台裏!

  • 映画化決算!忠臣蔵(2019年11月公開)

決算! 忠臣蔵

中村義洋/著 、山本博文/原作

605円(税込)

本の仕様

発売日:2019/10/01

読み仮名 ケッサンチュウシングラ
装幀 (C)2019「決算! 忠臣蔵」製作委員会/カバー画像、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-101631-3
C-CODE 0193
整理番号 な-104-1
ジャンル 歴史・時代小説
定価 605円
電子書籍 価格 605円
電子書籍 配信開始日 2019/11/01

時は元禄、御家御取潰しは現代ならば会社倒産。松の大廊下の刃傷沙汰で、主君は切腹、藩は解散。「いくさや!」と赤穂牢人が意気込もうとも、先立つものはお金。退職金、御家再興の運動費に、墓代? 吉良家に討ち入るなら武器だって必要だし……家老の大石内蔵助は減りゆくばかりの予算をいかにやりくりし、主君の敵(かたき)を討ったのか? 一級史料をもとに生れた同名映画を監督自身が小説化!

著者プロフィール

中村義洋 ナカムラ・ヨシヒロ

1970(昭和45)年、茨城県生れ。映画監督、脚本家。成城大学文芸学部芸術学科卒業。主な監督作品に『アヒルと鴨のコインロッカー』『チーム・バチスタの栄光』『フィッシュストーリー』『ジェネラル・ルージュの凱旋』『ゴールデンスランバー』『ちょんまげぷりん』『みなさん、さようなら』『奇跡のリンゴ』『白ゆき姫殺人事件』『残穢─住んではいけない部屋─』『殿、利息でござる!』『忍びの国』『決算! 忠臣蔵』など。『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズではナレーターも務める。

山本博文 ヤマモト・ヒロフミ

1957(昭和32)年、岡山県生れ。東京大学大学院修了。東京大学史料編纂所教授。『江戸お留守居役の日記』で、日本エッセイスト・クラブ賞受賞。『島津義弘の賭け』『日曜日の歴史学』『「忠臣蔵」の決算書』など著作多数。

目次

はじめに
30億円
9491万円
5429万円
3588万円
1638万円
614万円
1200万円
0円
あとがき
解説 山本博文

インタビュー/対談/エッセイ

映画か小説か? 映画も小説も!

中村義洋

 映画一筋でやってきましたが、初めて小説に挑戦しました。
 脚本家、映画監督として、小説を脚色して作品を作り続けること二十年。小説を読んで、ここは要らない、映像向きでないなどと(大変、僭越ながら)切り捨て、物語を二時間前後に収める作業を繰り返してきました。幸い、小説は小説、映画は映画の土俵で、という姿勢の作家さんとの仕事が多かったので、作品の肝さえズラさなければ(こちらもその肝に惚れ込んで請け負ったわけですから)割と好き放題に翻案してきたように思います。
 さて、今回、山本博文先生の『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書)を原作として「決算! 忠臣蔵」という映画を作りました。赤穂浪士の吉良邸討ち入りまでの道のりを、大石内蔵助が実際に残した『預置候金銀請払帳あずかりおきそうろうきんぎんうけはらいちょう』を元に予算の面から読み解くという斬新な切り口の原作ではありますが、何せ学術書、お話は一から考えねばなりません。『忠臣蔵』という誰もが知る物語がベースとなるものの、金にまつわる話となれば登場人物は入れ替えざるをえず、そもそも史実ですから都合のいい嘘もつけず、これまでの脚色とは桁違いの時間を労しました。様々な史料を読み漁り、小説家の方々は常々こんなご苦労をされていたのだなあと頭が下がる一方で、プロットは膨大な枚数に膨れ上がり、それをまた結局いつものように二時間の尺に削ぎ落とさねばならず、せっかく作り上げた新キャラも、忠臣蔵の定番を外した新解釈も泣く泣くカットしたりで、つまり、なぜ今回初めて小説に挑戦したかと言えば「もったいない」。映画で描き切れなかった事柄をなんとか復活できないか、という思いからでした。
 ならば今度は脚本を小説に書き換えるだけ、と軽く考えていましたが、まず、カギ括弧の問題が立ち塞がりました。脚本の場合、大石内蔵助のセリフならカギ括弧の上に、内蔵助、と書くだけでよいし、そこに例えば堀部安兵衛が絡んできても、安兵衛「○○○!」で済む話です。しかし小説では“と言った”などと書かねばならない。ずっとこの二人だけならばカギ括弧の応酬で済むかもしれませんが、何しろ忠臣蔵、登場人物の多いこと……。皆、好き放題に会話に割り込んできます。そこに一々、言った人の心情や背景を書き込まねばならず、これには面食らいました。
 それと、編集者の方に再三注意されたのが視点の問題。内蔵助の視点で進めている最中に吉田忠左衛門だの大高源五だのの心情を奔放に紛れ込ませてしまい、書いた本人は読み返してみても何ら違和感は感じないのですが、編集者曰く「映像業界の方にはよくある事」のようで、言われてみれば映画は多視点というか自由視点、誰がどんなセリフを言おうとその瞬間はそいつの視点です。えー、小説ってそんなに不自由だったっけ!? と、これまで読んできた名著の数々を読み返してみると、確かに視点は統一されていて、耳まで真っ赤になりました。
 そんなわけで、これまで作家さんから「映画だとこうなるんですね!」と言われてきたことが全て己に跳ね返り「小説だとこうなるんですね!」という、土俵の違いを思い知らされる発見の日々でしたが、それでも僕の強みといえば、大石内蔵助を演じる堤真一さんや、勘定方の矢頭長助を演じる岡村隆史さんら、出演者の声や仕草が実感として残っていることでしょうか。特に関西出身のお二方のセリフの掛け合いは、おそらく史上初となる全編関西弁(赤穂なので)の忠臣蔵において、その骨子となったことは間違いありません。そんな撮影現場の声を思い返せば、セリフはいくらでも湧いて出て(二人の口喧嘩は映画の倍ほどになりました)、その上、二時間にまとめるという、いつもの制約が外れた清々しさも手伝って、書けば書くほど筆の運びは滑らかに、熱を帯びていきました。武士の一分を立てつつも裏では金に汲々とする赤穂浪士たちの心情は、小説で細部が描かれることによってさらにヒリヒリとしたおかしみを伴うことができたのではないか、と自賛する一方、映画におけるスピード感、ドライブ感もこれがまた中々のものですので、是非とも、両方の土俵を楽しんで頂けたらと思います。

(なかむら・よしひろ 映画監督)
波 2019年10月号より

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