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漱石没後100年&生誕150年記念! 猫をこよなく愛する人気作家8名が「あの猫」に挑む。

吾輩も猫である

赤川次郎/著 、新井素子/著 、石田衣良/著 、荻原浩/著 、恩田陸/著 、原田マハ/著 、村山由佳/著 、山内マリコ/著

506円(税込)

本の仕様

発売日:2016/12/01

読み仮名 ワガハイモネコデアル
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-101050-2
C-CODE 0193
整理番号 な-1-50
ジャンル 文学賞受賞作家
定価 506円

「ねね、ちょっと、私だって猫なんですけどぉ~。名前はまだ無いんですけどぉ~」夏目漱石没後100年&生誕150年記念出版! 明治も現代も、猫の目から見た人の世はいつだって不可思議なもので……。猫好きの作家8名が漱石の「猫」に挑む! 気まぐれな猫、聡明な猫、自由を何より愛する猫、そして、秘密を抱えた猫――。読めば愛らしい魅力があふれ出す、究極の猫アンソロジー!

どういう本?

一行に出会う 私は猫なんだから、家事まではやってあげられない。(本書33ぺージ)

著者プロフィール

赤川次郎 アカガワ・ジロウ

1948年生れ。桐朋高校卒業後、日本機械学会在職中にテレビドラマ「非情のライセンス」シナリオ公募に入選。1976年「幽霊列車」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、小説家デビュー。1978年『三毛猫ホームズの推理』が大ヒットし、一躍ベストセラー作家となる。1980年『悪妻に捧げるレクイエム』で角川小説賞、2004年日本ミステリー文学大賞、2016年『東京零年』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。杉原爽香、吸血鬼、子子家庭などシリーズものも多く手掛け、2017年に著書600冊を突破。今もその数は増え続けている。映像化・舞台化作品に『セーラー服と機関銃』『探偵物語』『晴れ、ときどき殺人』『死者の学園祭』『鼠、江戸を疾る』『夢から醒めた夢』など多数。『いもうと』は1989年に刊行、ドラマ・映画・舞台化もされたベストセラー『ふたり』の続編である。

新井素子 アライ・モトコ

1960年東京都生れ。立教大学文学部ドイツ文学科卒業。1977年都立高校2年のとき、「あたしの中の……」で第一回奇想天外SF新人賞佳作に入選、星新一氏の強い推薦で作家デビュー。1981年「グリーン・レクイエム」、1982年「ネプチューン」で2年連続の星雲賞日本短篇部門受賞。1999年『チグリスとユーフラテス』で日本SF大賞受賞。『星へ行く船』『ひとめあなたに…』『結婚物語』『新婚物語』『あなたにここにいて欲しい』『緑幻想』『ハッピー・バースディ』、星新一作品のアンソロジー&エッセイ『ほしのはじまり』、『未来へ……』『素子の碁』『ゆっくり十まで』、『星へ行く船』復刊新装版シリーズ全5巻など著書多数。小社からは『おしまいの日』『もいちどあなたにあいたいな』『イン・ザ・ヘブン』を刊行。

石田衣良 イシダ・イラ

1960(昭和35)年、東京生れ。成蹊大学経済学部卒業、広告制作会社を経てフリーランスのコピーライターに。1997(平成9)年9月「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、続篇3篇を加えた『池袋ウエストゲートパーク』でデビュー。2003年7月『4TEEN』で直木賞受賞。2006年、『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞受賞。2013年『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞した。著書に『6TEEN―シックスティーン―』『夜の桃』『水を抱く』『チッチと子』『娼年』『逝年』『sex』『余命1年のスタリオン』『マタニティ・グレイ』などがある。

荻原浩 オギワラ・ヒロシ

1956(昭和31)年、埼玉県生れ。成城大学経済学部卒。広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。1997(平成9)年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞を、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞受賞を、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞。著作に『ハードボイルド・エッグ』『神様からひと言』『僕たちの戦争』『さよならバースディ』『あの日にドライブ』『押入れのちよ』『四度目の氷河期』『愛しの座敷わらし』『ちょいな人々』『オイアウエ漂流記』『砂の王国』『月の上の観覧車』『誰にも書ける一冊の本』『幸せになる百通りの方法』『家族写真』『冷蔵庫を抱きしめて』『金魚姫』『ギブ・ミー・ア・チャンス』など多数。

恩田陸 オンダ・リク

1964年、宮城県生まれ。1992年、小説『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞および第14回本屋大賞を受賞。近刊に『失われた地図』『錆びた太陽』『祝祭と予感』などがある。

原田マハ ハラダ・マハ

1962年、東京都生まれ。作家。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森美術館設立準備室勤務中の2000年、半年間ニューヨーク近代美術館に在籍。その後フリーキュレーターとして独立。2005年に「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞受賞。2012年に『楽園のカンヴァス』(新潮社)で第25回山本周五郎賞受賞。『ジヴェルニーの食卓』(集英社文庫)、『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)、『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』(幻冬舎新書)、『常設展示室』(新潮社)、『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)ほか著書多数。

村山由佳 ムラヤマ・ユカ

1964(昭和39)年、東京都生れ。立教大学卒。1993(平成5)年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞した。他の著書に、『アダルト・エデュケーション』『放蕩記』『天翔る』『天使の柩』『ありふれた愛じゃない』『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』『嘘 Love Lies』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』など。

山内マリコ ヤマウチ・マリコ

1980年、富山県生れ。2008年「16歳はセックスの齢」で女による女のためのR-18文学賞読者賞を受賞。2012年、初の単行本『ここは退屈迎えに来て』を刊行。ほかの著書に『アズミ・ハルコは行方不明』『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『東京23話』『買い物とわたし』などがある。

書評

アンドレアデルサルト

南伸坊

 道を歩いている時に、いきなり私の頭の中で外人の名前らしき音が浮かんできた。それを口に出したわけじゃないけれども、私は「異言」というコトバを想起した。
 まるで、身におぼえのない人名なのだ。一体、誰なんだ? アンドレアデルサルト。
「アンドレアデルサルト、アンドレアデルサルト、アンドレアデルサルト」
 と、脳の神経回路をムダにその意味不明の人名はかけめぐった。
 しかし、いきなり湧いてきた時と同様に、唐突にアンドレアデルサルトの出所は判明したのだ。そうか! アンドレアデルサルトは夏目漱石の『吾輩』に出てきた人名だった。美学者・迷亭が持ち出して、その後頻出した。
 私はずっと、この人名を洋食屋で「トチメンボー」を注文する類の、つまり根っからのデタラメだと思っていた。私の中でアンドレアデルサルトは、単に長ったらしくて覚えにくい架空の人物の名前だった。
 ふと、イタズラを思いついたように、私はこの架空の人物の名前をネット検索してみたのだった。びっっっっくりした。アンドレアデルサルトは実在の人物だったのだ。
 アンドレア・デル・サルト「仕立て屋のアンドレア」はルネッサンス期のイタリアの画家、1486年7月16日に生まれ、1531年1月21日に死亡している。
 画像も沢山出てくるが、いままでに見たことのある絵が一枚もない。しかし、そうかあ、本当にいたんだアンドレアデルサルト……と私は嘆息したついでに、トチメンボーについても調べたくなって、今度は「広辞苑」でトチメンボーを引いてみて唖然とした。なんと、メンチボールの単なるダジャレと思っていたトチメンボーも、実在していた。
(もっとも実在しなければシャレにならない理屈だが)
 漢字で書くと、栃麺棒、栃麺をのばす棒とある。栃麺とは栃の実の粉を米粉または麦粉と共にこねて薄くのばし、そばのように製した食品のことだそうだ。
「おそるべきことだ」と私が思ったのは、こうしたことよりも、このように調べる過程で自分が夏目漱石の『吾輩は猫である』を読了しておらず、何度も挑戦を試みたが、その都度失敗していたこと、その途上で覚える意味もないと思っていた人名・アンドレアデルサルトは覚えてしまったけれども、『吾輩』を読了していないことは丸々忘れてしまったことだ。
 そして、何の脈絡もなく、憶える意味もないと思っていた人名を、道を歩いてる拍子に思いだすのである。人間の脳ミソの不思議といえる。
 夏目漱石の『吾輩は猫である』は、世間で代表作のように言われているけれども、読んだつもりで実は読了していない人が案外多いそうだ。私もまたそういう人間であったわけだが、そういう人間が、そうそうたる流行作家諸氏の書いた、漱石へのオマージュ、というよりも『吾輩は猫である』へのオマージュ小説集である本書の感想を述べるというのはいかがなものだろうか?
 っていうか「断わるだろフツー」と、読者は思うだろう。私も思う。しかし老人となって図々しくなった私は、この事実を白状しつつ、しかもこの小説集がおもしろかった事を主張しようと思っている。
 私は『吾輩も猫である』は読了した。そして、赤川次郎氏の新井素子氏の石田衣良氏の荻原浩氏の恩田陸氏の原田マハ氏の村山由佳氏の山内マリコ氏のすべてが、おそらく得意技をもって漱石の『吾輩』を、ひっくり返したり、もじったり、その構造を再現してみせたり、まるで違ったジャンルへワープさせてみたり、と、技術の限りをつくすのに驚いた。それぞれが現代小説の書き手として、漱石に書けなかった『吾輩』と『猫』を書いている。
 漱石よりずっと猫を愛しているのがアリアリと伝わる人、漱石より猫の生態にくわしく、その様を実感的に描き出した人、猫と人間のかかわりを、漱石よりずっと踏み込んだところで主張する人、漱石の小説の持つ、当時の読者への「新情報」的側面をみごとに現代に置きかえた人。
 そして、なんといっても、それぞれの作品すべてがきわめてコンパクトにできあがっている点で、漱石を大いに凌駕している。

(みなみ・しんぼう イラストレーター、エッセイスト)
波 2016年12月号より

目次

いつか、猫になった日  赤川次郎
妾は、猫で御座います  新井素子
ココアとスミレ  石田衣良
吾輩は猫であるけれど  荻原浩
惻隠  恩田陸
飛梅  原田マハ
猫の神さま  村山由佳
彼女との、最初の一年  山内マリコ

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

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