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ご笑納下さい―私だけが知っている金言・笑言・名言録―

高田文夫/著

693円(税込)

発売日:2018/12/22

  • 文庫
  • 電子書籍あり

抱腹必至! 笑芸人たちの珠玉の一言。文庫書き下ろし秘話もたっぷり収録した決定版!

志ん生、談志、永六輔、渥美清に森繁久彌。たけし、昇太、松村邦洋……。芸界に飛び込んで半世紀。笑いに愛し愛された人々が輝く芸能の現場は、すべてこの目で見てきた。記憶に刻んだレジェンドたちの“珠玉の一言”を極秘エピソードと共にお届けする。どこから読んでも面白い。文庫書き下ろし秘話もたっぷり収録した決定版! 『私だけが知っている金言・笑言・名言録』1・2を合本し、改題。

目次
 文庫版まえがき
 まえがき(2016年春)
 忖度なしの“まえがき”(2017年春)

第一章 金言
第二章 笑言
第三章 名言

書誌情報

読み仮名 ゴショウノウクダサイワタシダケガシッテイルキンゲンショウゲンメイゲンロク
シリーズ名 新潮文庫
装幀 佐野文二郎/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 400ページ
ISBN 978-4-10-100441-9
C-CODE 0195
整理番号 た-125-1
ジャンル 教育・自己啓発、趣味・実用
定価 693円
電子書籍 価格 693円
電子書籍 配信開始日 2019/06/21

インタビュー/対談/エッセイ

突っ込みとは、訂正力である!

高田文夫相沢直

高田 どうも、タブレット純です!
相沢 (笑)高田先生の書籍といえば、古今東西さまざまな芸人さんを取り上げることで知られていますが、今回の本では、ムード歌謡漫談で注目を集めている、タブレット純さんも登場しますね。
高田 なかなか彼を取り上げる人はいないでしょ? タブレット純の上手なイジり方を知っているのは俺ぐらいだからね。イジり方もイカせ方も知っているんだから……って、俺は上質なAV男優か!?
相沢 『また出た 私だけが知っている金言・笑言・名言録(2)』はタイトル通り、第2作目ということですが、そもそもこのシリーズはどうして生まれたのでしょうか。
高田 金言集とか名言集というのはよくあるでしょ。でも笑言と、それにまつわる笑い話やエピソードとなると、書けるのは私しかいないだろうと、新潮社から声をかけてもらったんだ。
相沢 でも芸人さんだけでなく、本当に多岐にわたる人たちの言葉が集まっていますね。
高田 芸事でも何でも同じだけど、20代や30代の読者が知りたい芸人に詳しいとか、60代の人だけが喜ぶエピソードに詳しいとか、年代ごとに語れたり書けたりする人はいるんだよね。でも、10代から70代まで、どの年代の読者にも色々なエピソードを提供できるのは俺だけだろうという自負はある。1980年代の漫才ブームの時、俺は番組制作をはじめ、直接関わった。で、今回の落語ブームだけど、周りを見回してみると、同じ立場で残っているのは俺だけ。両方の時代に現場に居たのは俺だけなんだよね。漫才ブームでは(ビート)たけしさんがいて、落語ブームではクドカン(宮藤官九郎)がいてね。評論家は資料で書くかもしれないけど、俺は常にそこにいたからね。
相沢 両方のブームを、まさにオンタイムで知ってらっしゃるわけですね。やはりその現場に、居ることが大事なんですね。
高田 そう。関わること、首を突っ込んでいるのが大事だよ。どれだけおっちょこちょいで野次馬でいるかってことでもあるよね。
相沢 それにしても、高田先生はテレビはもちろん、ラジオも聴くし、落語会や芝居やライブにもこまめに足を運ばれるし、とにかく現場で“観て”いらっしゃいますね。
高田 本当に好きなんだよ。子供の頃からテレビとラジオが大好きで。三木のり平さん、八波むと志さんを観ていると、本当に幸せだった。それは今も同じで、面白い喜劇人を観ているときほど、幸せな時間はないね。今でもそう。若手でも面白い子を観るのはたまらない。三四郎とかカミナリとかミキね、観ていて嬉しくてしかたないよ。それでラジオに呼んで直接話もする。このスタイルはずっと変わらないね。
相沢 でも、自分の一番好きな事が仕事になってしまうと、嫌になってしまうこともあるじゃないですか。自宅ではお笑い関係は一切、シャットアウトするとか。そういう方もいらっしゃいますよね。
高田 スケールは違うけど、長嶋茂雄さん。凄いでしょ。6月4日のイースタンリーグの試合で始球式に出て、小学生のピッチャーに4球投げさせたんだよ。残念ながら打てなかったけど、長嶋さん、そのうち必ず打つつもりでいるね。だから辛いリハビリも、まったく苦にならないんだと思う。
相沢 本当に野球が好きなんですね。高田先生がお笑いを好きなのと同じですね。
高田 きっと長嶋さんは家に帰っても素振りしているよ。俺も家に帰ったらカミさんに冗談ばっかり言っている。これがラジオより面白いんだから。が人一倍厳しいからさ、よりレベルが上がるんだよね。
相沢 ところで、この本は笑えるエピソードも満載ですが、もう1つ、貴重な戦後の大衆芸能の歴史を教えてくれる本でもあると思います。前からお伺いしたかったのですが、高田先生は常にメモを取っておられるのですか?
高田 基本は頭の中だな。自分で面白いと思った事はすぐに記憶しちゃう。でも、長いものとかはメモを取るようにしているから、記憶とメモと二刀流だな。
相沢 僕は今、水道橋博士が主宰しているネットマガジン「メルマ旬報」で、この春から高田先生の評伝「ギョロメ伝」を連載しています。毎月、取材で高田先生にお会いして、生い立ち、時代背景から世相、文化まで、とにかく根掘り葉掘りエピソードをうかがって、後で調べ直すんですが、高田先生の記憶力がもの凄く正確なので、取材のたびに、驚きの連続です。
高田 とにかく覚えた事は忘れないんだ。これを特技というのかね。
相沢 先生は芸人さんの好き嫌いはあるんですか。
高田 よく“関西系は嫌いでしょ”と聞かれるけど、そんなことない。基本的に全員好きだね。
相沢 たしかに、本ではダウンタウンや銀シャリの話も出てきますし、関西の笑芸界の話題も紹介されてますよね。

伝説の「オールナイトニッポン」

相沢 人生で最も大きな出会いとなった芸人さんは誰ですか。
高田 弟子になったくらいだから立川談志師匠もそうだけど、やっぱり、たけしさんだろうな。同世代であの才能に巡り会ったのは、やっぱり運がいいんだなと思うね。
相沢 先生が構成だけでなく、出演もされた、伝説の「ビートたけしのオールナイトニッポン」(以下ANN)ですね。
高田 その前にね、俺、大学出てから10年間、とにかく放送作家として書きまくってた。だけど一緒に仕事をするのがポール牧さん、三波伸介さん、青空球児さん。みんな年上なんだ。三波さんなんか一回りも年上。芸には厳しい反面、原稿を書いて持っていくと、あれこれと教えてくれて、可愛がってくれたけど、なんか違うなと思い始めるのよ。この台詞のはこうだよなとか、ここはこうやって欲しいんだけどなァとか、自分の原稿と演者に溝が出来てしまう。俺も若いから、生意気だしさ。
相沢 仕事はあっても、ストレスがたまる環境だったんですね。
高田 そんな時に、ビートたけしに出会うんだ。そうしたら言葉のリズムが一緒。考えていることから、感性まで、みんな同じ。お互い30過ぎてるけど、屈折してたな。俺は忙しいけど、世に名前が出ないし。たけしさんはまだ売れる前で、出番があっても客席がガラガラでね。「やってらんねぇよ」という二人が、出会うべくして出会ったんだな。
相沢 1981年1月1日にANNがスタートした時、高田先生がたけしさんと一緒にしゃべるというスタイルは、当初から想定されていたのですか。
高田 ない。俺も最初は一般の放送作家と同じように、進行表に書いたメモを、目の前のたけしさんに渡していた。でも、たけしさんも俺も、なんか調子が出ないんだよね。そのうち、たけしさんが何か言ったら「そんなバカな」とか「言わせておけば」とか、突っ込みを入れ始めちゃったんだよ。その間がはまったんだね。リズムというか句読点というか。俺が声を出して笑ったら、リスナーもここは面白いところ、突っ込むところなんだ、と分かってくるんだね。逆に俺が黙っていると、これはあんまり面白くないな、と。たけしさんにも伝わるんだよ。今のトークが受けているのかいないのか。
相沢 まさにライブですね。
高田 そこで俺がゲラゲラと笑っている声が、あの松村邦洋には「バウバウ!」って聞こえたんだよね。それが俺のモノマネで後に大ヒットして一世を風靡するんだから。でも「ANNと北野ファンクラブでウケてる高田文夫」なんてネタ、最初は誰も分かんないよな。マニアックすぎて。
相沢 ナインティナインの岡村隆史さん、爆笑問題の太田光さん、脚本家の宮藤官九郎さん、ANNの影響を受けて育った方が、今もラジオの第一線にいらっしゃいますね。
高田 今回の本にも書いたけど、今名前の挙がった人たちのラジオ番組は毎週聞いているよ。その理由は、彼らが面白いからというのもあるけど、俺とたけしさんのANNが負けていないか、チェックするためでもあるんだ。とにかく負けず嫌いで、勝てず嫌いだからさ。
相沢 どうですか?
高田 勝ってるね。TT砲だね。“たけし高田砲”。まだまだみんな、俺たちには敵わないね。
相沢 (笑)やっぱり。
高田 ANNでは色々なことができたし、俺とたけしさんの影響力は強いだろうな。俺の影響を受けたクドカンなんて、再来年は大河ドラマの脚本だからね。ハナタレ坊主が日本一の作家だよ。こんなことが起こるんだから、やっぱり、理屈で言うよりも、笑い話をいっぱい残してあげることが必要だね。そのエピソードで人柄が知られたり、芸事が分かったりって大事だよな。
相沢 特に笑いは瞬間、瞬間で残らないことが多いですからね。
高田 例えば、俺はよく談志師匠の言葉を書くんだけど「バカは隣の火事より怖い」なんて、そうだなって思うし、本当にバカって怖いから奥が深いじゃない。それから(明石家)さんまちゃんの「生きているだけで丸儲け」もいい言葉だよ。タモリさんの「やる気のある奴は去れ」もいいよな。
相沢 真理が出ますよね。重いというか、新しいことわざとして広まってほしいですよね。
高田 言葉って消えちゃうからね。だからこそ、こうして書き留めておきたいんだ。

あのCMソングまで!

相沢 それにしても「ホテル三日月」のCMソングの歌詞が入っているのも笑いました。
高田 こんな本ないだろ? 前の都知事が正月に家族連れで会議していたというホテルのCMソングだけど、作曲したのは、日大芸術学部の俺の同級生なんだ。「およげ!たいやきくん」作った男。あの話題で持ちきりだった時、そういえばこの歌、俺の友達が作ったんだとすぐに思い出してラジオにもすぐ呼んだんだよ。これが不思議だけど、俺って何が起きても、その話題を身近に引き寄せることができる。何かが誰かとつながっている。要は人間好きなんだな。人が好きで、誰とでも絡んでいくから、色んなネタが自然につながっちゃう。
相沢 思い出す材料とか、引き出しが無尽蔵にあるんですね。
高田 そう。だから人呼んで“検索要らず”。
相沢 記憶力とも重なりますが、高田先生のトークにおける反射神経の早さからも、頭の回転の早さが凄いのだなと思います。
高田 早いね。日本一だと思うよ。瞬間で言葉を選ぶセンス。これは実戦で鍛えたものだね。
相沢 やっぱり突っ込みですか。突っ込みの早さと的確さというか。
高田 ただ突っ込むのではなく、訂正する力というのかな。「違うよ!」とか「そうじゃねぇよ!」ではなく「○○という風に言うんだよ!」とか「松村、こうだろ!」って言うのが面白いんだよね。突っ込みとは訂正力である……あ、これ次に本が出る時に使おうかな。
相沢 まだまだ楽しみです。
高田 この本もそうだけど、相沢君にも、今まで誰にも話したことのないエピソードをたくさん話しているし、「ギョロメ伝」もぜひ、いっしょに読んで欲しいね。こっちも秘話満載だよ。俺の人生はイコール、戦後の大衆芸能の全てでもあるからね。

(たかだ・ふみお 放送作家)
(あいざわ・すなお 作家)
波 2017年7月号より
単行本刊行時掲載

“笑言”こそ笑いの現場の“証言”

高田文夫

 還暦を過ぎて大病(心肺停止)をやって死にそうになったから、一日4箱吸っていたハイライトもピタッとやめ、酒も死なない程度にチビチビと。道楽者でならした私でも、こうなってくると借りてきたショーンKのように大人しい。
 この節はもっぱら趣味はセンテンス(スプリング)集め。身体に悪くもないし金もかからない。特に笑芸に携わる人々の言葉だ。奥が深そうでいて大して深くもないから余計おかしい。私は笑芸者達の言葉をテレビ、ラジオ、雑誌、ライブ、寄席からコレクションし始めた。
 どの形式で集めるというルールはない。面白い言葉だけを雑食で集める。アンチ・センテンスグルメなのだ(ほとんど言ってる事がわかりませんが)。団塊の世代の我々が、大学時代に熱心に読んだ永六輔の『芸人その世界』の精神だ、はい。しかし、あの本ほど論理的にキチンと整理されていない。そこがまた“心肺停止8時間男”の凄いところ。
 そんな時にタイミングがいいんだか悪いんだか、新潮社のOと名乗る只の“高田フェチ”が現れた。今だに私のラジオは欠かさず聴いているようだ。週刊誌の連載も読んでいる。そんな男がよくも新潮社へ入れたもんだと、そっちにびっくりした。新潮の好きな乙武だって“女体大満足”である。少し脇道に逸れました。
 O君が考えてくれたタイトルが『私だけが知っている 金言・笑言・名言録』。
 実のところ、人生に役立つような金言や名言はほとんどない。載っているのは私の仕事柄“笑言”がいっぱい。この“笑言”こそが笑いの現場の“証言”でもあるのだ。
 例えばどんなセンテンスがあるか。ここではなるべく本には収まりきらなかった言葉の数々を紹介しよう。放送作家をやりながら噺家でもあった私としては、まずは“落語”部門の我が師・立川談志の言葉と笑言。
「努力とはバカに与えた夢である」
「学問とは貧乏人の暇つぶし」
 いきなり凄いことを言い切っちゃってるでしょ。居なくなって4年半。時々会ってまた小言の一つも聞きたくなる。
「小言は、己の不快感の解消だ」
 そういう事だったのだ。そしてとどめは、
「馬鹿はとなりの火事より怖い」
 さすが、奥が深すぎる。笑っちゃう言葉であります。落語の世界からは昭和の名人、“黒門町の師匠”と呼ばれた桂文楽が生涯大切にした言葉。
「長生きするのも芸の内」
 しみじみ現在91歳の桂米丸、93歳の内海桂子を見ているとそう思う。「どーもすいません」で売れに売れた初代林家三平の後を継いだこぶ平(いま正蔵)、いっ平(いま三平)が落語家になった時、ポツリと誰かがつぶやいた。
「名人に二代なし」
 うまいなとは思ったが、志ん生と志ん朝という素晴らしい親子の例もあるから一概には言えないと思った。味噌汁のCMをやった人間国宝の柳家小さん
「これでインスタントかい」
 その昔、寄席で大問題となった一気にまとめて「大量真打」が誕生した時、そのうちの一人の芸を見て小さん「これでインスタントかい」と言ったとか言わないとか。
 漫才やコントの世界からも。最後はインチキ坊主もやっていたラッキー7のポール牧(私はずっとラッキー7のコントを書いていた)。
「ドーランの下に涙の喜劇人」
 ちょっとくさいですネ。指パッチンしたくなります。我らがツービート(たけし)デビュー当時はこんなネタも。
「俺の親父は真面目だったからネ。背中に〈真面目〉と彫ってあった」
 ライバルで早世した星セント・ルイスは、
「俺たちに明日はない。キャッシュカードに残はない」
 そして2009年に東京マラソンで心肺停止した松村邦洋と私の合言葉は、
「私のハートはストップモーション」
 私が退院した時の第一声が、
「心臓止めるな、タクシー止めろ!」

(たかだ・ふみお 放送作家)
波 2016年5月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

高田文夫

タカダ・フミオ

1948(昭和23)年、東京都生れ。日本大学芸術学部放送学科卒業後、放送作家に。「スターどっきり(秘)報告」「オレたちひょうきん族」など、数多くの番組に携わる。また構成だけでなく出演もした「ビートたけしのオールナイトニッポン」は、社会現象にもなった。落語立川流Bコースに入門し、1988年に立川藤志楼として真打昇進。その翌年から始まった「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」は、2018年12月現在も続く人気番組となっている。『TOKYO 芸能帖 1981年のビートたけし』『誰も書けなかった「笑芸論」』『高田文夫の大衆芸能図鑑』など著書多数。

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