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坂口恭平「家の中で迷子」(200枚)
佐藤友哉「神がかり」(100枚)

新潮 2017年12月号

(毎月7日発行)

特別定価998円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2017/11/07

発売日 2017/11/07
JANコード 4910049011270
定価 特別定価998円(税込)

家の中で迷子[二〇〇枚]/坂口恭平

見慣れた部屋が森に変貌し、水で溢れる。迷子の相棒は歌、偶然、そしてネズミ――無数の命と物質に祝福された世界探しの大冒険!
神がかり[一一〇枚]/佐藤友哉

世間から身を隠す男を過去が脅かす。かつて自らの命と引き替えに差し出したものとは?

◆御嶽の少年/大城立裕

戦前の沖縄――祖父母の集落で少年は仲間たちと夏の時間を過ごす。甘やかな記憶の物語。

◆『を待ちながら』ノート/保坂和志
――無力さ、現前性、ユートピア

生者しかそこにいなかった――ある芝居を見て以来私は現前性のことをずっと考えている。
◆キュー[新連載・第三回]/上田岳弘

募る疑問、予期せぬ展開。人類の運命を描く想像力の拡張!
新潮×Yahoo! JAPAN共同企画
■■ 連載小説 ■■
◆TIMELESS(二十)[連載完結]/朝吹真理子
◆格闘(十)/高樹のぶ子
◆野の春(十四)/宮本 輝
◆荒れ野にて(三十)/重松 清

◆わかる」と「操る」/森田真生

「虚数」の発見からリーマンの「多様体」へ。身体的な知から自立した数学の新しい光景とは。

◆Let It Bleed――料理人・澤口知之/福田和也

友が死んだ。本当の文章と味を分かち合った盟友が。文芸評論家と料理人の“血”の交流。

模倣ミメーシスの悦び――新しい宮沢賢治(2)/今福龍太

作為や意図の向こうに豊饒な宇宙がたちあがる。賢治や井上有一が見た、照応=交感コレスポンデンスの力。

◆編集者 漱石[第七回・一二〇枚]/長谷川郁夫

「それから」「門」「彼岸過迄」数々の名作執筆と並行し文豪の“編集機能エディターシップ”は開花した!

◆小林秀雄[第五十回]/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第五十八回・島のスナックにて
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一五八回・微妙と密度
■本
・滝口悠生『高架線』/岡田利規
・磯﨑憲一郎『鳥獣戯画』/佐々木 敦
・大友良英『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』/滝口悠生

■新潮
・疲れさせるのは、あの純粋?/岩松 了
・蔵書の話/紀田順一郎
・安吾と読書修行/近藤ようこ
・ベルリンでコンテンポラリーダンスを見る/内野 儀
・実存と「生き物の問題」/串田純一

第50回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】 ●大澤信亮 ●川上未映子 ●鴻巣友季子 ●田中慎弥 ●中村文則

この号の誌面

立ち読み

編集長から

完璧な迷子――
坂口恭平「家の中で迷子」

◎もし完璧な迷子というものがあるとしたら、それはいちばん身近な場所にいながらにして迷子になることだろう。「家の中で迷子になっていた」という一文から始まる坂口恭平家の中で迷子」(二〇〇枚)の主人公は、物語の1頁目で自室だったはずの空間が見知らぬ場所だとしか思えなくなり、2頁目で途方に暮れながら、幼少期に福岡の地下街で迷子になった体験を思い出すと、3頁目では、その記憶の中の地下街からさらに別の空間に迷い込む。そう、「家の中で迷子」は完璧な迷子によるめくるめく放浪譚だ。主人公の旅は、全生命・全物質に精霊が宿る神話のようであり、ルーセル(アフリカの印象)やブルトン(溶ける魚)に直結する超現実主義の最新形のようでもある。だが、書き手が全身全霊で賭けているのは、語られた(書かれた)ことが、それを聞く(読む)ものにとって体験そのものになる、という物語の根源にある力だ。この文学の異端児は、想像力の王道を歩んでいる。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞