女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第5回 受賞作品

王冠ロゴ 大賞・読者賞受賞

宮木あや子

「花宵道中」

宮木あや子

――今回、大賞と読者賞をみごと同時受賞された宮木さん。小説を書き始めたのはいつごろですか?

 自分の中に、小説が書きたい、という欲望があることに気づいたのは、13歳のときでした。よく、宿題なんかで「夏休みの思い出を作文にしなさい」というのがありますよね? 私の場合、それが夏休みの出来事とは全く関係のない小説になってしまうんです。小説を書く方が楽しい、というよりも、自分にとってその方が自然だったのだと思います。そのころから、普通の大学ノートに小説を書き溜めていました。でも、そのころの作品は、あまりに自分の字が汚くて、今ではとても読み返せないですが(笑)。

――作家になろうと思ったきっかけは?

 昔から、絵画や歌、ピアノなどいろいろ習い事をしていました。でも、どの分野においても突き抜けるようなものがなく、「ああ、才能がないんだな」とあきらめていました。他に何ができるのか考えたときに、小説の世界だったら、著者は時間が経つにつれて進化していくことができると思ったんです。
 ちょうどその頃、堀田あけみさんの『1980アイコ十六歳』が話題になっていたこともあり、15歳のときに、「20歳までに作家になれなかったら、きっぱりあきらめよう」と決心して、作家になるために小説を書き始めました。まあ、それが「25歳までに……」「30歳までに……」とずるずる延びていって、今日に至るわけですが。
 20歳のとき、2年がかりで書いた300枚の小説を「文藝」新人賞に応募しました。太宰治賞や、最近では青春文学大賞にも応募しましたね。「R-18文学賞」は2回目の挑戦でした。

――どうして「R-18文学賞」に?

 私は、小説を書くとエロいし、書くと人が死ぬんです。最初に書いたのも、わりと官能的な小説でした。自分自身にあまり性欲がないから、そういったものを客観的に見られるのかもしれません。その反面、その渦に飲まれる人たちの心情がよく分からないからこそ、興味が尽きることがないんです。

――第4回の「R-18文学賞」に応募いただいた作品は、洋服店で働く女の子を主人公に女性同士の性愛を描いたものと、高校の養護教諭と生徒との交流を描いた作品でしたね。今回の「花宵道中」は江戸時代を舞台にしたものですが、時代小説も書いていらしたのですか。

 時代ものはこれが初めてです。日本ラブストーリー大賞の選評を読んでいたら、選考委員の方の一人が、候補作に対して、「人の死が安直過ぎる」というコメントを寄せていました。私の小説も、人の死を描くことが多いので、「人が死んでも安直に思われない世界……江戸時代だ!」と思って(笑)。吉原の資料集めは主にインターネットです。

――「酒が入ると肌に花が咲く」というくだりなど、独創的なアイディアですよね。

 いや、それは、酔っ払うと、昔の怪我とかが赤くなって浮かび上がるじゃないですか。そこから思いついたのですが……。

――好きな作家、影響を受けた作品を教えてください。

 中学生の頃は、ポプラ社の「児童文学シリーズ」やコバルト文庫を読みまくっていましたが、それ以外の、難しそうな文学系の作家の作品にはあまり興味を持てませんでした。「メロスが走っててもいいじゃん」とか思っちゃって(笑)。
 最近の作家さんでは、エミリーテンプルキュートの洋服が大好きなので、嶽本野ばらさん……いや、作品だけでなく、世界観すべてを敬愛してます。あと、三浦しをんさんはちょっとオタクっぽい作品が好きです。彼女はルックスも可愛いですよね。また、恩田陸さんの学園モノにもかなりはまりました。

――今後の抱負は?

 自分の書いたものを読んで、たくさんの人に面白いと思ってもらいたいですね。
 特に、女の人に喜んでもらえるような小説を書いていきたいです。もちろん、エロもどんどん進化させていくつもりです。でも、あっけらかんとしたエロには魅力を感じないので、黴が生えそうなエロ……というと、ちょっと汚い感じですが(笑)、文章から湿度と温度が立ちのぼるようなエロ小説を、これからも追求していきたいです。

――この「花宵道中」の舞台となった遊郭・山田屋で繰り広げられるもうひとつの物語が「小説新潮」6月号(5月22日発売)に掲載されます。これからも、がんばってくださいね!