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川端康成文学賞

主催・公益財団法人 川端康成記念会 後援・株式会社 新潮社 発表誌:「新潮」

 第43回 川端康成文学賞 受賞作品

文字渦

円城塔

「新潮」 平成28年 5月号

受賞のことば

 いつのまにやら作家暮らしも十年となり、そんな節目に大きな賞を頂けたことはとてもうれしく、ありがたい。
 本作を書きはじめたのは自分の中の何かがかわりはじめた時期にあたり、それは多分、もぐることによる浮上であるとか、特殊化による一般化とでもいうものである。
 東洋や日本への回帰ということでもあるが、加齢とともに様々のことがうるさくなってきただけという気もする。
 小説をめぐる環境の変化を考えたとき、借り物ではなく、手に馴染んだ道具でなければやっていけなくなるかもしれないという危機感もあった。
 この文章を書きながら、賞を頂いたのは小説であり、自分はその代理人であるべきだという気持ちがしてきた。人工小説がやがて小説に届いたならば、人工小説自身が受賞の言葉を書くはずなのだが、不徳の故にいたらない。
 精進いたします。

円城塔氏略歴〕

一九七二年、北海道生まれ。二〇〇七年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞、二〇一〇年『烏有此譚』で野間文芸新人賞、二〇一二年『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞を受賞。他の著作に『Self-Reference ENGINE』『これはペンです』『エピローグ』『プロローグ』などがある。

選考委員

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