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今月の表紙の筆蹟は朝井まかてさん。
[朝井まかて『眩』刊行記念特集]

波 2016年4月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/03/28

発売日 2016/03/28
JANコード 4910068230461
定価 102円(税込)

[朝井まかて『眩』刊行記念特集]
【インタビュー】朝井まかて/謎の女絵師を追って
葉室 麟/もの作る者は闇を駆ける

加藤幸子『十三匹の犬』
川村 湊/わたしは犬である

諸田玲子『風聞き草墓標』
村井淳志/荻原重秀父子の奇怪な死の真相に挑む

[原田マハ『暗幕のゲルニカ』刊行記念特集]

梶尾真治『杏奈は春待岬に』
成井 豊/空前絶後の初恋小説

麻見和史『死者の盟約―特捜7―』
村上貴史/殺人事件と誘拐事件の二重奏

[村山由佳『ワンダフル・ワールド』刊行記念対談]
蜂谷宗苾(志野流香道二十一世家元継承者)×村山由佳(作家)/「香り」が語る物語を聞く

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』
朝吹真理子/「わたしたち」の影

川端康成『川端康成初恋小説集』
待田晋哉/永遠少女の夢

[押切もえ『永遠とは違う一日』刊行記念対談]
押切もえ×中瀬ゆかり(新潮社出版部長)/ささやかな表現が持つ力

石井妙子『原節子の真実』
南沢奈央/あなたは何を守りますか

広岡裕児『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの―』
沢木耕太郎/「格差」の無限運動を超えて

岩村充『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』
北村行伸/金融の技術革新は我々をどこに導くか

末盛千枝子『「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―』
中江有里/朝ドラのヒロインのような人生

垣内俊哉『バリアバリュー―障害を価値に変える―』
高野 登/「この人をお師匠と呼ぼう」と決めた瞬間

ジョンソン祥子『すっきり、楽しく、自由に暮らす ~Maru in Michigan~』
ジョンソン祥子/写真がくれたもの

はるな檸檬『れもん、うむもん!――そして、ママになる――』
東村アキコ/超革新的、マタニティーブルー漫画!

野地秩嘉『サービスの達人たち―究極のおもてなし―』
野地秩嘉/サービスとは技術

吉野嘉高『フジテレビはなぜ凋落したのか』
吉野嘉高/栄光と衰退のフジテレビ物語

[池澤夏樹『詩のなぐさめ』、堀江敏幸『その姿の消し方』刊行記念対談]
池澤夏樹×堀江敏幸/詩の味わい、詩の効用

コラム
谷崎潤一郎『細雪』上・中・下
原 幹恵/映画になった新潮文庫

三橋曉の海外エンタ三つ巴
考える人─コミュニティづくり宣言
とんぼの本編集室だより


連載
新連載 ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)/最初の悪い男
新連載 山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第13回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第32回
津村記久子/やりなおし世界文学 第23回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第73回
大澤真幸/山崎豊子の〈男〉 第2回
佐藤賢一/遺訓 第4回
森 功/暗黒事件史 日本を変えた犯罪者たち 第3回
ジェーン・スー/生きるとか死ぬとか父親とか 第2回
木皿 泉/カゲロボ日記 第24回

編集室だより  新潮社の新刊案内  編集長から  カット 水上多摩江

編集長から

今月の表紙の筆蹟は朝井まかてさん

◇今月の表紙の筆蹟は、朝井まかてさんです。新作『』は葛飾北斎の娘にして「江戸のレンブラント」とも称される葛飾応為の半生を描き出した長篇です。生没年が定かでなく現存する絵も数少ない謎に包まれた女絵師の姿を、朝井さんは闊達にして細密な筆さばきで浮き彫りにしました。父北斎のほか渓斎英泉、曲亭馬琴、為永春水ら江戸時代後期の文人墨客たちが物語を彩り、丁寧な時代考証が江戸の下町へといざなってくれます。また、応為が絵組みを考え彩色をほどこしていく描写は真に迫っており、ことに本の装幀にも使用している代表作「吉原格子先之図」を完成させるラストは圧巻です。揮毫していただいたのは巻頭で父が幼い娘に画法を話して聞かせる際の言葉で、それに合わせて朝井さんの愛猫マイケルにご登場いただきました。彼女は御年二十歳、すなわち人間にすると百歳ほどになりますが、そうと思えぬ愛くるしい表情を浮かべてくれました。
◇私たちは戦争に負けた国の国民として、家族を喪った女として――それでも生き続けなければならないのよ――乃南アサさんの長篇小説『水曜日の凱歌』の一節です。戦後七十年の昨年、刊行されたこの作品は「女たちの戦争を描く感動巨編」(週刊ポスト・8月21、28日号)、「先の大戦と戦後とは何かを問う作品が次々と刊行されている。その中でも出色」(「大波小波」東京新聞・8月20日夕刊)など、各紙誌で高い評価を得ましたが、このほど第66回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。戦後の「裏面史」に押し込められ、タブーのごとく扱われてきたRAA(特殊慰安施設協会)。その異様な施設には、日本という国がいわば性の防波堤として進駐軍の兵士たちに差し出した女性が集まっていました。苛酷な日々をおくる彼女たちの姿を、RAAで通訳として働く母を持つ14歳の少女の視線で描き出したこの大作からは、「変わり身の早い日本人の情けない姿と逞しさ」(池上冬樹氏、日本経済新聞・9月20日)がまざまざと伝わってきます。
新潮社ホームページ情報
http://www.shinchosha.co.jp/
◎新訳・復刊コレクション 新シリーズ「村上柴田翻訳堂」刊行スタート!
http://www.shinchosha.co.jp/murakamishibata/

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。