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[恩田 陸『私と踊って』刊行記念特集]

波 2013年1月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/12/27

発売日 2012/12/27
JANコード 4910068230133
定価 105円(税込)

[恩田 陸『私と踊って』刊行記念特集]
恩田 陸/踊る人々
大森 望/エッセンスを凝縮した十九の物語

【『読まずにはいられない―北村薫のエッセイ―』刊行記念対談】
戸川安宣×北村 薫/《書物愛》と《作家魂》がたぎる一冊

ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』(新潮クレスト・ブックス)
川本三郎/不完全な記憶がかたちづくる過去

塩野七生『想いの軌跡』
大野英男/贅沢な時間

立川談四楼『談志が死んだ』
広瀬和生/師匠(おやじ)と弟子(せがれ)の絆

阿郷 舜『桶狭間 天空の砦』
池上冬樹/力みなぎる新星の大仕掛け

池谷裕二・中村うさぎ『脳はこんなに悩ましい』
池谷裕二/「性欲」だって脳科学

柴門ふみ『大人のための恋愛ドリル』
藤田香織/恋愛に悩める大人への、リアルな練習問題

ブロニー・ウェア『死ぬ瞬間の5つの後悔』
名越康文/限りある人生をどう生きるか

【『涙と花札―韓流と日流のあいだで―』刊行記念インタビュー】
金 惠京/韓国と日本は二卵性双生児、二つの国の心を伝えたい――

日下部五朗『シネマの極道―映画プロデューサー一代―』
坪内祐三/『仁義なき戦い』を作った男の人生

春原 剛『米中百年戦争―新・冷戦構造と日本の命運―』
久保文明/変容の軌跡と歴史の分岐点

上田正昭『私の日本古代史(上・下)』(新潮選書)
井上満郎/我も彼も生きるための「必生」の古代史

【『川瀬敏郎 一日一花』刊行記念対談】
辰巳芳子×川瀬敏郎/スープに近い花

新潮文庫編集部編『いつも一緒に―犬と作家のものがたり―』(新潮文庫)
片野ゆか/“犬歴”に思う幸せ

廣野 卓『卑弥呼は何を食べていたか』(新潮新書)
廣野 卓/謎の女王卑弥呼の食

コラム
考える人-眠りと夢の不思議の国へ
三橋曉の海外エンタ三つ巴

連載
梨木香歩/冬虫夏草 続・家守綺譚 第8回
鹿島田真希/少女のための秘密の聖書 第4回
斎藤明美/高峰秀子の言葉 第18回
吉田篤弘/ソラシド 第6回
桜木紫乃/モノトーン 第11回
三山 喬/トスキナの唄 流浪のキネマ屋・古海卓二伝 第11回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第34回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第13回
江 弘毅/有次と庖丁 第2回
津村節子/時のなごり 第16回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は、恩田陸さんです。最新刊『私と踊って』は恩田さんの小説の多彩な魅力を満喫できる作品集ですが、今回撮影させていただいたのは、恩田さんが旅に出る際に必ず持参しているモレスキンの手帖と愛用のペンです。「今では、常にじりじりと身体のどこかで旅の願望を感じている」(『隅の風景』小社刊)という恩田さんは、旅に出る前に必ず行き先の土地にまつわる本や映画などをチェックして、その予習内容を手帖に書き込んでいくそうです。そして、旅行中に出逢った印象的な事物もメモしていって、旅の記録として保存しておくとのこと。写真のページは二〇〇八年にモロッコを訪れた際に書き留めた地図です。ちなみに、恩田さんにはこの旅の手帖のほかに、読破した本についての読書ノート、映画についてのノート、そしてご自身が見た夢をメモした手帖まであるそうです。常に読者を想像外の世界へと導く万華鏡のように楽しい恩田ワールドは、そうした丹念な記録の積み重ねから生まれているのかもしれません。
◇本誌で連載中からご好評をいただいた片山杜秀氏の『未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―』が、第十六回司馬遼太郎賞を受賞しました。授賞理由は、「第一次世界大戦で近代的な総力戦争を学んだ『持たざる国』日本が、太平洋戦争でなぜ玉砕賛美の精神主義的な戦い方をしたのか――。本書は(中略)国家総動員体制のファシズムはもともと日本には構造的には無理だったのだ、と説く。従来の現代史の空白域に照明を当てた刺戟的問題提起を評価したい」というものです。本書に関しては、最近急激に人気を呼んでいるノンフィクション作品専門の書評サイト「HONZ」(http://honz.jp/)でも、麻木久仁子さんが懇切丁寧に読み解いたレビューを寄稿していますので、ぜひご一読ください。片山氏の新作は『国の死に方』(新潮新書)。こちらも東日本大震災以後のこの国の危機的状況を、明治以来の国家としての歪みと重ね合わせながら明晰に分析した、示唆に富む論考です。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。