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日本を蝕む「極論」の正体

古谷経衡/著

836円(税込)

発売日:2018/01/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

極論バカ、増殖中! 「組体操」を強制する教師たち 日本共産党は経済オンチだ どこへ消えた「TPP亡国論」 もうやめようよ「バブル賛歌」 「日本会議」を巡る陰謀論 地方消滅論はウソばかり。

極論を目にすることが増えた。政界、教育現場、論壇、職場、メディア……あらゆる場所で左右も保革も関係なく、ちょっと冷静になれば明らかに変だとわかることを声高に主張し、他人を糾弾する「極端な人たち」が目立つ。それはかつての連合赤軍やオウム真理教を想起させる存在だ。「バブル賛歌」「TPP亡国論」「地方消滅」「憲法九条無殺生論」等々、はびこる極論の奇怪さを嗤い、その背景を考察する。

目次
序章 電子時代の囚人たち
極論に群がる人々/閉鎖的な集団が極論を生む/世界革命という幻想/ハルマゲドンという極論/殺しあう市民/電子時代の疑似監獄
第1章 「教育現場」の極論――組体操とニ分の一成人式
閉ざされた教育空間/藤子不二雄(A)が描いた学校の暴力性/組体操の重圧/マスゲームを望むのは誰か/「二分の一成人式」という奇習/『サザエさん』的世界観/第三者の不在が非常識を生む/大麻を自慢する教師/豹変する問題教師たち/いじめ問題の解決法
第2章 「日本共産党」の極論――内部留保は本当に存在するのか
謎の政党/極論の訴求力/「九条の会」を訪ねて/憲法九条無殺生論/忘れられた共産党の良心/輸出戻し税のウソ/架空の税/内部留保批判のウソ/バードウォッチングで逮捕という極論/『ドカベン』発禁説/身内のための論理
第3章 「TPP亡国論」という極論――トランプがすべてを吹き飛ばした
右翼も左翼もTPP嫌い/経済右翼の主張/ネット右翼からの支持/韓国は中国の属国ではないという事実/韓国は救うべき対象か/あいりん地区の光景/『TPP亡国論』のヒット/アメリカの陰謀のはずが……/異形の「TPP反対決起集会」/会員制の論壇/トランプ大統領が黙らせた/ネット左翼・三宅洋平の主張/三宅選対で観た光景
第4章 「バブル賛歌」という極論――リアル半沢たちの悪しきノスタルジー
豪華絢爛な時代/リアル半沢直樹たちの昔話/バブル賛歌への懐疑/バブル期の食卓/貧しい日本の貧しい住宅/憲法違反の住宅水準/蓮舫の優雅なバブル生活/マイカー保有率は上昇し続けている/増加する海外旅行/マスコミ人種の勘違い/競争なき時代の特権階級/悪質なノスタルジー/貧困はいつもある
第5章 「地方消滅」という極論――タ張はずっと衰えていた
一〇年で一二〇万人の減少/秋田県の消滅可能性/「意識高い系」のアピール材料/人口減少は日本だけではない/労働力としての子供/フランスの成功もやはり移民が支えている/人口減少は昔からの問題/誰も誘拐されていない/ほんとうの夕張の姿を知っていますか/夕張は日本の未来図ではない/廃れる地方は廃れるべき
第6章 「プレミアムフライデー」という極論――土日休みは常識ではない
土日も祝日も関係ない生活/半ドンの復活/本気で賛同しているのか/空回りの根本原因/実施率二・八パーセント/インパクを憶えていますか/官の無力と民の実力
第7章 「日本会議黒幕説」という極論――原稿料はクオカード
右翼は儲かるのか/日本会議という黒幕/私の靖国参拝/白髪の会議/光り輝く頭皮/フィクサーKからのクオカード/「保守派」の台所事情/陰謀論に誘導する本/開かれた日本会議
第8章 「男系・女系」という極論――小林よしのりとゆかいな仲間たち
『戦争論』の衝撃/小林のスタンス/小林への罵言雑言/男系と女系で対立/理屈の上では男系だが/生前退位のご意向/退位に反対する人たち/「保守論壇」の論理/小林の極論/筆者も登場/民進党の裏切り/「ゴー宣」の論理/不倫は罪か
終章 ニー世紀のインパール
七三年後のインパール/感覚を重視せよ/だから私は嫌われる/冷笑の価値

書誌情報

読み仮名 ニホンヲムシバムキョクロンノショウタイ 
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610751-1
C-CODE 0236
整理番号 751
ジャンル 政治・社会
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2018/01/26

薀蓄倉庫

「二分の一成人式」という奇習

 成人の二分の一、つまり10歳の子供に「育ててくれた両親への感謝」を大勢の保護者の前で述べさせる。そんな儀式が小学校では行われているそうです。「二分の一成人式」というのだそうです。
 現在子育てをしている人にとっては常識ですが、そうでない人には初耳の儀式でしょう。『日本を蝕む「極論」の正体』で著者は、さまざまな「極論」が生まれやすい団体、場所を取り上げており、その代表の一つとして教育現場を挙げています。「二分の一成人式」もその産物である、と指摘しています。なぜそういうものが生まれるのかは、本書で。

掲載:2018年1月25日

担当編集者のひとこと

極端な人にイライラしないための薬です

 コメントを求めに来た新聞記者に「殺すぞ」という市長は論外にせよ、何だか言うことが極端な人、妙に物言いが過激な人が目立つ気がします。少し前は母国に対して「死ね」という人もいました。
 ネットの影響も大きいのでしょう。匿名の場合、「死ね」「殺す」とか過激な表現を用いたり、事実かどうかよくわからないことでも「絶対そうだ!」と言い切ったりすることに心理的な抵抗が薄くなるのかもしれません。そのクセが抜けずに、リアルのほうでも極端な方向に突っ走る人がいるのだろうか、などと思っていました。
 このあたりの「極端な人」が発生するメカニズムについて、著者は「競争のない、閉鎖的な集団や組織から極論は常に発生する。外部から見えづらい、つまり第三者から監視・監査されない『内向き』の組織や団体の中での物言いは、次第に極論となり沸騰してくるが、その内部にいる人間たちには正論として信じられてしまう」と明快な答えを示しています。たしかに、その視点でみると、大抵の極端な人、極端な物言いの説明がつきます。本書を読めば、そういう人たちに対して無駄にイライラしなくなることでしょう。
 周囲の諫言を聞かず、なにかというと「戦争だ」「火の海だ」と言っている国も、これにピッタリあてはまる気がします。

2018/01/25

著者プロフィール

古谷経衡

フルヤ・ツネヒラ

1982(昭和57)年札幌市生まれ。著述家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。インターネット、ネット保守、若者論などを中心に言論活動を展開。著書に『若者は本当に右傾化しているのか』『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』『左翼も右翼もウソばかり』など。

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