ホーム > 書籍詳細:女系図でみる驚きの日本史

女系図でみる驚きの日本史

大塚ひかり/著

836円(税込)

発売日:2017/09/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

平家は滅亡していない。大事なのは胤(たね)よりも腹だった!

胤(たね)よりも腹(はら)が大事――母親が誰かに注目した「女系図」でたどると、日本史の見え方が一変する。滅亡したはずの平家は、実は今上天皇にまで平清盛の血筋を繋げる一方、源頼朝の直系子孫はほどなくして途絶えているのだ。「史上初にして唯一の女性皇太子はなぜ誕生したのか」「徳川将軍家にはなぜ女系図が作れないのか」等々、著者作成の豊富な系図をもとに、次々と歴史の謎を解き明かしていく。

目次
第一講 平家は本当に滅亡したのか
平家の生き残りだらけ/天皇に繋がる清盛の血/北条政子も平氏/“腹”が運命を左右する
第二講 天皇にはなぜ姓がないのか
女帝と易姓革命/史上初の藤原氏腹天皇/女系天皇を許容する古代法/“卑母”を拝むな/女性皇太子の誕生
第三講 なぜ京都が都になったのか
「渡来人の里」だった京都/天皇の生母は百済王族の末裔/妻子のおかげで即位できたミカド/流動的だった天皇の地位/古代天皇・豪族を支えた母方の力/今も生き続ける「滅亡」の一族
第四講 紫式部の名前はなぜ分からないのか
娘によってのみ名を残す父/紫式部という呼び名が表す力/母の名だけ記される/乳母の力が一族に影響/繁栄する紫式部の子孫/清少納言と紫式部の意外な接点
第五講 光源氏はなぜ天皇になれなかったのか
“劣り腹”という侮蔑語/「逆玉」で出世した道長/婿取り婚が基本/道長の「愛人」だった紫式部/“数”ならぬ身の夢
第六講 平安貴族はなぜ「兄弟」「姉妹」だらけなのか
出世の決め手は「母方」/藤原定頼というモテ男/女泣かせの「美声」/『小大君集』に描かれるレイプ事件
第七講 「高貴な処女」伊勢斎宮の密通は、なぜ事件化したのか
密通斎宮は紫式部の「はとこ」/『伊勢物語』が伝える「逢瀬」/政治利用された「密通」/父と娘の対立/「不義の子の末裔」の密通
第八講 貴族はなぜ近親姦だらけなのか
犯した養女を孫の妻に/息子の妻を奪う/異母妹と子をなす/出家後の女色/姪を欲しさに/“腹”が卑しいから
第九講 頼朝はなぜ、義経を殺さねばならなかったのか
妻を息子に譲る/「後家の力」で分かる義経の地位の高さ/白拍子の愛人はステイタス/源平二人の後家
第十講 徳川将軍家はなぜ女系図が作れないのか
子や孫に呼び捨てにされた側室/正妻と側室の極端な身分差/「性」と「政」を峻別/“フグリ”をつぶされた鎌倉将軍/強い外戚を作らない
補講その一 聖徳太子は天皇だった? 謎の年号「法興」
補講その二 乳母が側室になる時 今参局と日野富子
補講その三 究極の男色系図 政治を動かす「男の性」
補講その四 戦国時代の偽系図 学者と武将と「醜パワー」
補講その五 茶々と家康の縁談 久々の女帝誕生の真相
あとがき
参考原典・主な参考文献

書誌情報

読み仮名 オンナケイズデミルオドロキノニホンシ 
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610735-1
C-CODE 0221
整理番号 735
ジャンル 歴史・地理
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2017/09/22

薀蓄倉庫

「女系図」が作れない唯一の時代

 著者が女系図を作ろうとして「はたと困った」のが、江戸時代。
 平安、鎌倉、室町、江戸時代の、最高権力者の母親の地位、出身階級を調べたら、時代が下がるにつれ正妻腹率が低下し、徳川将軍にいたっては、ほとんどが側室腹となったのだそう。しかも正妻は公家や皇族であるものの、歴代将軍の生母である側室は、百姓、八百屋、魚屋の娘や、親が死罪になった娘までいて、身分が低すぎて「女系図」が作れない。
 家康は、北条氏による鎌倉六代将軍までの歴史書『吾妻鏡』を愛読していた。
 そこには、北条政子と、実の息子である二代将軍頼家とその嫁の一族が、後継者をめぐって対立し、その結果、頼家の子、つまり政子の孫が殺され、嫁一族も処刑されたことが書かれている。頼家もその後「死去」したとあるが、『愚管抄』によれば「首に紐を巻き、陰嚢をつぶしたりして殺」されたのだとか。外戚争いの結果、将軍である子や、実の孫まで殺した北条政子および北条家。源頼朝の直系子孫は、ほどなくして絶えたため、以後、公家や皇族を将軍に迎えるようになった。
 家康はそのことを熟知していたはず。力のある外戚を作らず、徹底的に徳川家のみが力をもち、権力闘争を避ける意図があったのでは……と著者は推測している。

掲載:2017年9月25日

担当編集者のひとこと

大事なのは、胤(たね)よりも腹(はら)だった!

「平家って滅亡してないんですよ」著者の大塚ひかりさんが、趣味の「系図作り」について語った際に、楽しそうにそう仰った時、目からウロコが落ちました。
 平清盛の娘たちは生き延びていて、しかもそれなりの身分にみな嫁いでおり、子孫をたどると、後醍醐天皇や、後伏見天皇、はては今上天皇にまでたどりつくのです。
 大塚さんが中学生の頃から作っているという母系の系図、つまり「女系図(おんなけいず)」をたどると、女性皇太子が誕生したのはなぜか、当時移民の町だった京が都になった理由、はたまた、ある武将が自分の死後、妻を息子にゆずったのは……等々、これまで見えにくかった日本史の驚きの「真実」が、次々と姿を現します。
 父系図だけでは、歴史の半分しか見えていなかったことを痛感しました。

2017/09/25

著者プロフィール

大塚ひかり

オオツカ・ヒカリ

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。『ブス論』、個人全訳『源氏物語』全六巻(以上、ちくま文庫)、『本当はエロかった昔の日本』(新潮文庫)、『女系図でみる驚きの日本史』『女系図でみる日本争乱史』『毒親の日本史』(以上、新潮新書)、『くそじじいとくそばばあの日本史』(ポプラ新書)、『ジェンダーレスの日本史』(中公新書ラクレ)など著書多数。趣味は年表作りと系図作り。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

大塚ひかり
登録

書籍の分類