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フランスはどう少子化を克服したか

高崎順子/著

814円(税込)

発売日:2016/10/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

ズレてない? 日本の政策。親に期待しない、3歳から学校に、出産は無痛で。「5つの新発想」を徹底レポート。

少子化に悩む先進国から、子育て大国へ。大転換のカギは、手厚い支援策の根幹を貫く新発想だった。「2週間で男を父親にする」「子供はお腹を痛めて産まなくていい」「保育園に連絡帳は要らない」「3歳からは全員、学校に行く」――。パリ郊外で二児を育てる著者が、現地の実情と生の声を徹底レポート。日本の保育の意外な手厚さ、行き過ぎにも気づかされる、これからの育児と少子化問題を考えるうえで必読の書。

目次
はじめに
第1章 男を2週間で父親にする
あちこちに子連れパパが/14日間の「男の産休」/「赤ちゃんと知り合う時間」/毎晩ゲーム機に向かった夫/妻と時間差で取る産休/父親産休を受け入れる、職場の考え方/家族政策の転換/育児の先生は助産師/父親にも産後うつが/分担育児の行き過ぎ/育休男性はわずか2%/日本における、父親への取り組み
第2章 子供は「お腹を痛めて」産まなくてもいい
まさかの無痛分娩/より良いスタートのために/医療側の負担も軽減/ローマ法王も無痛容認/無痛分娩のデメリット/「無痛分娩の権利」を維持するために/無痛分娩で出生率が上がる/半数が「出産に満足していない」/妊婦健診に財布はいらない/その医療費は誰が出しているのか/産休手当も医療保険の負担/気軽に「母子保護センター」へ/妊婦と乳幼児は社会的弱者
第3章 保育園には、連絡帳も運動会もない
毎日の持ち物リスト?/フランスならストライキ……/保護者負担は最低限に/保育園第一号/保育園はすべて認可園/「保育士」資格は一つではない/「ここは集団生活の場」/東京より厳しい? パリの保活
第4章 ベビーシッターの進化形「母親アシスタント」
母親アシスタントとは何か/「問題は、母親アシスタントの夫」/雇用までの6ステップ/共同ベビーシッターという手段/それぞれ幾ら掛かるのか?/保育園に入れるのは誰なのか/政権も推す母親アシスタント/「企業枠」という新ビジネスモデル/社員の意識が保育事情を変える/前向きに発想を転換してみる/もし連絡帳をなくしたら?
第5章 3歳からは全員、学校に行く
就学率ほぼ100%、無償の教育/入学の条件は二つ/週24時間を過ごす教室/午前2時限、午後1時限/「生徒になること」を学ぶ/5歳までに5つの学習分野を/初めての成績表/年間テーマは「人類の歴史」/「教育係」と「世話係」/保護者参加は、やりたい人だけ/始まりは教会の保護施設/早期公教育で格差是正を/「国の保障する権利」の使いみち
おわりに
出典・参考資料一覧/保育学校 5分野での学習目標
取材にご協力いただいた皆さん

書誌情報

読み仮名 フランスハドウショウシカヲコクフクシタカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610689-7
C-CODE 0237
整理番号 689
ジャンル 政治、外交・国際関係
定価 814円
電子書籍 価格 814円
電子書籍 配信開始日 2016/10/21

インタビュー/対談/エッセイ

子供の増える国、フランスの発想法

高崎順子

 ピカピカの遊具、園内で手作りするごはん。保育士は園児をこまめに着替えさせて清潔に保ち、月に一度は季節の行事や遠足を催す。日本の保育園を数件見学した際、その設備と充実した保育内容に感銘を受けた。
 一方、私が2人の子供を預けているパリ郊外の保育園では、給食はセンターでつくったものがほとんど。パリ市内では園庭すらない保育園が多く、外遊びも毎日ではない。着替えは汚れがよっぽど不快な状態(びしょ濡れなど)でなければさせず、Tシャツに粘土や絵の具をつけたまま帰ってくる。園の行事は年に2回、クリスマス会と学年末のお祭りのみで、運動会やお遊戯会はない。まして入園式も卒園式もない。比べてみると、日本はずっと手厚い保育を行っているのだ。日本の保育園は、素晴らしい……!
 それでも私には、そこに自分の子供を通わせることが、とてもハードルの高いことのように思えた。それは日本の保育園で一般的な、「毎日の持ち物表」の存在を知ったから。乳幼児の場合、〈名前を書いた紙オムツ5枚、ビニール袋2枚、口拭きタオルとエプロン各2枚ずつ、着替え1枚ずつ、記入済みの連絡帳……〉。これらを毎日用意して持参し、降園時には使用済みオムツがビニール袋に入れて返却されるという。一方のフランスは、毎日手ぶらで通園し、手ぶらで帰宅する。手厚い保育を行う日本の園は、親に求められるものもまた、フランスよりずっと多いのだ。
 フルタイムで勤務した後、悪臭を放つオムツを持ち帰り、朝晩と子供の世話をして、翌朝また5枚のオムツに記名する(返却時の混同防止のため)。そんな自分の姿を想像して、私には無理だ! と、泣きそうな気持ちになったのを覚えている。そしてそこから考えた。どうして保育園のあり方がこんなに違うのだろう。合計特殊出生率ではフランスは1・98、日本は1・42(2014年、OECDデータ)と、大きな開きがある。手厚い保育を行う日本で、なぜ子供が増えないのか。逆にフランスではなぜ、子供が増え続けるのか。
『フランスはどう少子化を克服したか』は、そんな素朴な疑問に端を発している。そこから現地の保育関係者に会い、子育てをめぐる諸制度を調べていくと、人間的で合理的、かつ現実的な「フランス式」が見えてきた。保育だけではない。父親の育児参加、無痛分娩、就学前教育と、子持ち家庭が経験する様々な局面に、国を挙げた子育て支援策が行き届いている。そしてそこには、日本とは全く異なる発想が採用されていた。保育が日本ほど手厚くなくとも、子供が増えていく発想法が。
 少子化の危機に悩む日本に今必要なのは、まさにその「異なる発想」であることを、本書でご理解いただけると信じている。


(たかさき・じゅんこ ライター、パリ郊外在住)
波 2016年11月号より

蘊蓄倉庫

父親の育休? 父親の「産休」?

 フランスでは、男性も育休をとって子育て参加……なんて日本人の大きな誤解! じつはあちらの育休取得率は、日本における取得率と同レベル、わずか2%台に過ぎません。大きく違うのは男の「産休」だと『フランスはどう少子化を克服したか』著者の高崎順子さんは指摘します。
 一般的に、女性の産休は出産予定日の6週間前と出産翌日からの8週間ですが、男の「産休」は子供が誕生した日から始まるのがポイント。3日(出産有給休暇)+11日(子供の受け入れ及び父親休暇)の2週間で、入院中の妻とともに赤ちゃんの世話の仕方を学ぶほか、自宅での新生活をスタートさせます。この「産休」を大半の男性が取得しているというのです。11日間の父親休暇は2002年の施行からすばやく社会に浸透しました。本書では、フランスがいまも少子化を克服し続けている「5つの新発想」をご紹介します。


掲載:2016年10月25日

イベント/書店情報

著者プロフィール

高崎順子

タカサキ・ジュンコ

1974(昭和49)年東京都生まれ。東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第四大学ソルボンヌ等で仏語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材・執筆の他、各種コーディネートに携わる。著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著)等。

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