ホーム > 書籍詳細:「ポスト・グローバル時代」の地政学

国際報道の第一人者が現場から読み解く「現代地政学」の決定版!

「ポスト・グローバル時代」の地政学

杉田弘毅/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2017/11/24

読み仮名 ポストグローバルジダイノチセイガク
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 294ページ
ISBN 978-4-10-603819-8
C-CODE 0331
ジャンル 政治
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2018/05/11

互いに引かれあうトランプとプーチンの真意、中国「一帯一路」の最終形、弱小国・北朝鮮が求めるもの、移民と難民に悩む欧州と中東……そして日本の行く先は? 隘路に嵌った資本経済と民主主義から生まれる人々の「怒り」をキーワードに、エゴを剝き出しに動き始めた国々の“行動原則”と世界を見るための“8つの指標”を示す。

著者プロフィール

杉田弘毅 スギタ・ヒロキ

1957年生まれ。共同通信社論説委員長。一橋大学卒業後、共同通信入社。テヘラン支局長、ニューヨーク特派員、ワシントン特派員、ワシントン支局長、編集委員室長などを経て2016年6月から現職。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、東京-北京フォーラム実行委員、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科講師なども務める。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『さまよえる日本』(生産性出版)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)など。

目次

まえがき
第1章 「第二のヤルタ」への道
ロシアの積極工作/サイバーという新兵器/トランプとプーチンの蜜月/プーチンはヒーロー/ポスト真実の世界/ロシアの「夢」/生かせぬエネルギーの宝庫/帝国復活の方策/第二のヤルタ体制/価値観同盟の終焉/むき出しのパワーの時代
第2章 地政学と地経学
(1)地政学
日本との縁/八紘一宇の地政学/核とイデオロギー/ハイブリッドの戦い/地政学の逆襲/地政学の野合
(2)地経学
兵器に代わる手段/潰えた日の丸油田/新しいシルクロード/「米国第一」の地経学/地経学の勝者と敗者/「周辺国」に格下げの日本
第3章 怒りの地政学
マッキンダーの問いかけ/感情の地政学/怒りが世界を覆う/忘れられた庶民/オバマ・ドクトリン/世界の警察官ではない/トランプ・ドクトリン/陽光の降り注ぐ下で/技術革新が職を奪う/なぜ白人なのか/トイレ論争/白人至上主義/戦略家バノン/解がない構造的問題/世代間の対立/事実より恐れ先行/揺れる民主主義/フェイクニュース浸透の理由/テレビショーのルール/メディアの敗北/メディアの「民主化」/フィルターバブル/思想の階級闘争/たいまつが消えるとき
第4章 価値観が揺さぶる世界
2008年11月の敗北/数世紀の民族の怒り/アッシリア王国の都/矛盾の象徴IS/資源の呪い/人間開発の遅れ/戦禍を逃れ/集中する戦争/宗教のくびき/イスラムの誇り/ホームグロウンテロ/コーランを奪えるか/アトス山のプーチン/プーチンとチプラスの抱擁/東方正教と地政学/引き裂かれた国/中華民族のエネルギーの爆発/富者のための共産主義
第5章 移民の地政学
北に人が引き付けられる/「蛮族」という欧州の脅威/人口のバランスシート/移民受け入れは得か損か/同化と変質/普通の国になるアメリカ/都市の時代/都市間外交/国家との対決
第6章 地政学と怒りの交差地
(1)あらゆる地政学の縮図――北方領土
オホーツク海という要衝/エネルギー地政学
(2)第二のベルリンの壁――バルト海
徴兵制の復活/ハイブリッドの脅威
(3)地政学と宗派のせめぎ合い――中東
宗教と民族と歴史/代理戦争
(4)核と怒りの共鳴――朝鮮半島
弱小国の地政学/包容政策/現状維持の悲劇
(5)アジアの地中海を制する――中国
グローバル・ガバナンス/トゥキディデスの罠
(6)海のシルクロード――インド洋地域
チョークポイント/歴史的対立に火/核のにらみ合い
第7章 世界を見る八つの指標
(1)Border――国境と国家の行方
(2)Democracy――民主主義は復活するか
(3)Capitalism――資本主義の新しいルール
(4)Energy――安い石油と地球の未来
(5)Nukes――核兵器を禁止できるか
(6)Civic rules in Cyberspace――サイバー空間のルール
(7)Demography and Religion――人口動態と宗教
(8)Chokepoints――地政学リスクの克服
あとがき ――三つのグローバリズムと日本

インタビュー/対談/エッセイ

「地政学」だけでは決まらない!

杉田弘毅

 地政学の祖であるハルフォード・マッキンダーの問いかけがモチーフとなってこの本が出来上がった。
 マッキンダーは「ハートランドを支配する者が世界を制する」という警句が有名だ。地政学はその国の持つ地理や資源などで運命が決まるとの決定論でもある。だから、マッキンダーは冷たい戦略家と思われがちだ。しかし、著書『デモクラシーの理想と現実』の中で彼は、シェイクスピアの言葉を引用しながら、人生は運勢ではなく個人の努力が決めると結んだ。つまり地理の制約が世界を律するのではなく、自由を希求する努力こそが「人間を地理の奴隷から解放する」と考えた。
 この地政学と人間の努力の相克は、私の30年間の国際報道で常に頭に浮かんでいたテーマだ。
 例えば日本。この国ほど地政学者が重視する国はないのに、地政学は主流にならなかった。これは驚異である。日本はユーラシア大陸の大陸パワー(中国、ロシア)と海洋パワー(米国)がせめぎ合う接点にある。どちらに顔を向けるかで、世界の覇権の行方は決まる。いわゆる回転軸(ピボット)の国である。
 マハン、マッキンダー、ハウスホーファー、スパイクマンといった地政学の先駆者が、日本を研究しその動向に目を光らせたのは、当然だ。戦後もケナン、キッシンジャー、ハンチントン、ブレジンスキーら戦後の世界秩序を描いた戦略家は日本研究を怠らなかった。日英同盟、日独伊三国同盟、日ソ中立条約、そして戦後の日米同盟は地政学の帰結である。
 しかし、世の中、地政学だけでは決まらない。戦後の日本は米国と同盟を結びながらも、中国やロシアと柔軟に友好関係を築く知恵を持った。しかも、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、日本の安全と生存を保持するという憲法を大事にしてきた。地政学とはまったく対極にあるグローバリズムの理想に日本人は愛着を感じた。マッキンダーにならって言えば、地理の束縛を超えて自由にグローバルに行動しようという知恵の発露である。
 だが、今の世界はもっと複雑である。知恵ではなく人々の感情、その中でも「怒り」が渦巻き、世界を動かす。トランプの登場、英国のEU離脱、欧州右派政党の躍進、「イスラム国」の出現、中国の挑戦、そして北朝鮮の核ミサイル危機。民族の怒りや屈辱が、世界の安寧を揺さぶっている。グローバリズムの暗黒面、党派政治の機能不全、異質を嫌う人間性。そんな説明がなされている。そしてSNSという民主化されたメディアが怒りを拡散し、政治に動員していく。
 問題はこうした負のスパイラルが解決する兆しが、ポスト・グローバル時代の世界のどこにも見えないことだ。記者として地球のあちこちを観察してきた正直な気持ちを言えば、悲観的にならざるを得ない。破局を回避するヒントとして8つの指標を本書の最終章に上げた。

(すぎた・ひろき 共同通信社論説委員長)
波 2017年12月号より

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