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「損して得とれ」「急いてはことを仕損じる」は、数学的に正しい!

逆説の法則

西成活裕/著

1,404円(税込)

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発売日:2017/05/26

読み仮名 ギャクセツノホウソク
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 238ページ
ISBN 978-4-10-603809-9
C-CODE 0334
定価 1,404円

経済が縮小傾向にあると、人はつい短期的な思考に陥る。目先の利益を優先させるあまり技術の蓄積が疎かになり、次世代を支える長期プロジェクトも立てにくくなる。10年前に渋滞学を世に問うた数理物理学者が、「長期的思考」がいかに正しいかを多くのロジックで証明。ビジネスに応用できる「四つの逆説の法則」が企業を救う。

著者プロフィール

西成活裕 ニシナリ・カツヒロ

1967(昭和42)年、東京生れ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学卒。修士及び博士課程は航空宇宙工学を修了、専門は数理物理学、渋滞学。2007(平成19)年、『渋滞学』(新潮選書)で講談社科学出版賞と日経BP・BizTech図書賞を受賞。2013年に「科学技術への顕著な貢献 2013(ナイスステップな研究者)」に選ばれる。著書に『無駄学』『誤解学』(共に新潮選書)、『疑う力』(PHPビジネス新書)、『とんでもなく役に立つ数学』(角川ソフィア文庫)、『シゴトの渋滞学』(新潮文庫)など。

西成研究室のホームページ (外部リンク)

目次

まえがき
序章 正言若反
第一章 世界は逆説に満ちていた
〈個人編〉愛される人とは/苦労と失敗/勉強と無駄/研究と流行/教えないことの大切さ/便利さと引き換えに/スポーツ――最初は負けでも/オセロ――負けるが勝ち/声楽――高音は下に引け/健康――行き過ぎに注意
〈組織編〉老舗企業/日本に多い理由/長期投資/年金制度と投資/ROEと会計制度/研究開発/営業戦略/ゲインロスとフロントエンド/物流と配送/生産性の向上と改善/稼働率の罠/経営責任とコンプライアンス
〈社会編〉交通安全とリスク恒常性/渋滞吸収と車間距離/制限速度/車線/混雑情報提供のジレンマ/信号機/公共交通/パニックと避難/自動運転/人工知能ブーム/安全安心/環境資源/国際関係
第二章 逆説を支える法則
逆説の条件/マイナスとプラス/空けるが勝ち その1:急がば回れ/空けるが勝ち その2:バケツリレー理論/空けるが勝ち その3:スケジュール/ブレと準最適/分けるが勝ち その1:ランチェスターの法則/分けるが勝ち その2:ローカルとグローバル/分けるが勝ち その3:適正サイズ/かけるが勝ち/すり合わせと行列/負けるが勝ち その1:利他行動/負けるが勝ち その2:押し引きと間合い/目的型の逆説/損得一定の原理
第三章 日本の進むべき道
なぜ長期的視野になれないのか/どのように合意形成していくか/個人のあるべき姿/組織のあるべき姿・大学編/組織のあるべき姿・企業編/真似されないモノとほどよしのモノづくり/評価制度を見直す/真の効率化とは/国のあるべき姿・責任の所在/規制と自由
あとがき
参考文献

インタビュー/対談/エッセイ

もっと長い目で見ませんか?

西成活裕

 最近、会話を「昔は」から始めることが多くなった。どうしても昔の良い点と現状とを比べてしまうのだ。将来、老害となって若者に迷惑をかけたくはないので、大抵のことは文句を言わずに新しいものを受け入れるようにしている。がここ10年以上、どう考えても以前と比べておかしくなっているように感じていることがある。それをあえて声をあげて言った方がいいのではないかと思い続けていたが、とうとう抑えきれなくなってきて、本書を書き下ろした。
 日本はいま課題が山積みである。大企業の経営不振や格差社会の進行、そして高齢化による社会保障制度の崩壊の不安、また遅れている震災復興などもある。どうしてこうした事態になっているのか。私なりの結論をひと言でいえば、それは「長期的視野の欠如」なのである。
 近年、私たちはどんどん短期的な視野に陥ってしまっている。個人や会社、国家、いずれのレベルでもだ。短期的には問題解決しているように見えるが、それは単なる対症療法でしかない。長期的に見れば大きなマイナスの副作用を生んでしまうことが多く、根本治療に取り組まなかった浅はかさが社会の様々な場面で露呈してしまっているのだ。もちろん長期的視野の重要性を分かっている人もいるのだが、その視点で物事を進めていくのが極めて難しい社会になりつつある。
 それではどうすればよいのだろうか。その答えが、まさに私が「渋滞学」を通じて20年以上にわたり研究してきた「急がば回れ」にあった。根本的でかつ自然な方法は、逆説的に考えることなのである。あることを達成したければ、今と逆のことをした方が長期的に見て良い場合も多い。これは「損をして得をとれ」といってもいいだろう。
 例えば、会社の利益を上げようとして、多くの工場では装置の稼働率を上げて生産性を高めようとする。しかし実は稼働率はあえて少し下げた・・・方がトータルで見ると利益は高くなるのだ。なぜなら、稼働率が100%近いということは、その装置をメンテナンスする時間もなくなり、装置が故障した場合は工場全体の生産が停止してしまうからだ。
 こうした事例をできるだけ多く科学的に分析し、長期思考の重要性をまとめたものが本書である。どうして逆説的な行為がうまくいくのか、そのロジックを「4つの法則」としてまとめることができた。これらを知っておくことは、今後何か判断に迷った時の助けになると私は確信している。長い目で見て大きなプラスをもたらす選択肢の存在をいつも忘れないでいてほしい、という願いをこめて全力で執筆した。
 新潮選書は今年で50年を迎えたが、実は私も今年で節目の50歳であり、不思議な縁を感じている。私の提案が、日本社会の諸問題の根治に少しでも寄与できればと切に願う。

(にしなり・かつひろ 東京大学先端科学技術研究センター教授 渋滞学者)
波 2017年6月号より

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