ホーム > 書籍詳細:クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙―

クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙―

松居竜五/著 、ワタリウム美術館/編

1,650円(税込)

発売日:2007/11/22

  • 書籍

森羅万象を記録した先駆的エコロジストの、恐るべき頭脳の森へと分け入ろう!

研究対象は粘菌、キノコ、藻、昆虫から男色、刺青、性、夢まで、この世あの世のすべて。果て無き大宇宙の謎を追い、世界を放浪、原生林を駈け巡った熊楠は、あらゆる事物の本質に迫るため、見たままを詳細に記述しまくった。奇才が遺した膨大で不思議な資料を大公開、その頭脳と心の森に踏み込む、新しいクマグス論!

目次

木陰で憩う南方熊楠。1920(大正9)年、高野山での植物調査にて


彩色図が描かれ、きのこの標本が貼られた菌類図譜など、熊楠の菌類コレクションの一部。撮影・飯田安国


熊楠が友人の土宜法龍宛手紙に描いた猫の図。合わせ鏡の中のように、奥へと猫が永遠に続く
はじめに
 森羅万象を記録する 文・松居竜五

Ⅰ 海外から那智、田辺へ 文・松居竜五
博物学への関心
海外への眼
アメリカ
フロリダ、キューバ
ロンドン
中央アジアへの夢
那智
田辺
昭和天皇
家族と家

II 森の生命の世界へ 文・松居竜五
粘菌
きのこ
藻類、地衣類
高等植物
昆虫、小動物

III 内的宇宙へ 文・松居竜五
病の自覚
夢への関心
身体への関心
セクソロジー
人肉食について
民俗学への関心
南方マンダラ
タブー論から神社合祀反対へ

娘が語る父クマグス
南方文枝インタヴュー録 〈1〉〈2〉〈3〉
〈エッセイ〉
 町田康 途方もなく大きい熊楠
 中上紀 未来の人、熊楠
 飯沢耕太郎 見えない森に踏み込む――“キノコの王”クマグス
 和多利志津子 クマグスのこと二題

クマグスの熊野へ行こう 文・中瀬喜陽
那智山/川湯温泉/継桜王子社・野中の一方杉/神島/南方熊楠旧邸

主な参考文献
南方熊楠略年譜
作品所蔵一覧

書誌情報

読み仮名 クマグスノモリミナカタクマグスノミタウチュウ
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 128ページ
ISBN 978-4-10-602165-7
C-CODE 0395
ジャンル 科学史・科学者、科学、歴史・地理
定価 1,650円

担当編集者のひとこと

クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙―

 紀州和歌山が生んだ植物学者、生物学者、民俗学者として、いまや広く知られる南方熊楠(1867-1941)。ナンポウグマのクスノキ、なんて読む方は、もはやいないでしょう。本書のカバーにも使用した、冬の山中、腰巻一丁で煙草をふかす「林中裸像」の写真も、どこかで見たことがあるのではないでしょうか。
 粘菌を研究したひと。キノコの図譜を何千枚も描いたひと。神社合祀に反対して原生林を守ろうとしたひと。屈強な体躯に強靭な意志をあらわす太い眉をもったひと。猫語が話せたひと。ともかく破天荒だったひと。……熊楠にまつわる話は数多く、学問や研究よりも奇想天外な言動が注目されがちな面もありますが、たしかにそれもまた熊楠の魅力。本書は、そうした多面体のような熊楠像から、さらに一歩進んで、奇才熊楠が遺した膨大な資料を大公開、そこから複雑なる頭脳の森へ深く踏み込もう、というものです。
 たとえば、前の晩に見た夢を書き付けた日記。余白に走り書きされた数字は、寝床の熊楠が今まさに眠りに落ちるぞ、という瞬間に、その正確な時間をさっと書いたものだそうです。また、ロンドン留学時代に大英博物館に通って世界の民俗・風習を筆写した「ロンドン抜書」。全52冊のノートには、刺青の文様から指紋のパターン、女性器の図までびっしり描かれています。
 熊楠にとっての研究対象は、キノコ、粘菌、藻類、昆虫などの生命の世界から、夢、病、性、身体といった内的宇宙まで、まさに森羅万象でした。動植物も眠りのなかの夢も等しく、体を張って物件を収集し、自分の目で見たままを正確に記録しつづけていく。そういう方法を生涯かけて熊楠は貫き、物事の本質に迫ろうとしたといえます。
 もちろん、アート作品のように美しい植物や菌類の図譜や粘菌の世界も満載。気鋭の学者が最新の研究に基づいて展開する、新たな熊楠論とともにお楽しみください。

2007/11/22

著者プロフィール

松居竜五

マツイ・リュウゴ

1964年、京都府生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。学術修士。東京大学教養学部留学生担当講師、ケンブリッジ大学客員研究員、駿河台大学助教授を経て、現在(2007年11月)、龍谷大学国際文化学部准教授、南方熊楠顕彰会理事、日本国際文化学会常任理事、熊楠関西研究会事務局。著書に『南方熊楠 一切智の夢』(朝日新聞社、1991)、『南方熊楠の森』(共著、方丈堂出版、2005)、『南方熊楠英文論考「ネイチャー」誌篇』(共訳、集英社、2005)など。

ワタリウム美術館

ワタリウムビジュツカン

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

松居竜五
登録
ワタリウム美術館
登録
科学史・科学者
登録
科学
登録

書籍の分類