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やさしい仏像の見方

西村公朝/著 、飛鳥園/著

1,430円(税込)

発売日:2003/06/25

  • 書籍

仏像について、あらゆる疑問に答えます。究極の解説書。

如来の額のコブはいったい何? 明王はなぜ怖い顔をしているの? 仁王に阿形と吽形があるのはどうして? お地蔵さんだけが坊主頭になっている理由は? そもそもなぜ仏像が作られるようになったの? 仏像について、ありとあらゆる素朴な疑問にお答えします。写真とイラストもたっぷり。仏像の見方をやさしく指南します。

目次

右図の天地を逆にすると胎盤はさながら蓮の葉のよう。仏像が蓮台の上に乗っている理由は、人間誕生の原点に秘密があるのでは? イラスト:西村公朝

如来の着付の完成形。こちらが偏袒右肩(へんたんうけん)と呼ばれる。 モデル:インド古典舞踏家シャクティ

公朝さんが最初に彫った十大弟子像「阿難(あなん)」。お釈迦さんが死なないよう必死で祈る姿。
撮影=松藤庄平
序 仏像ができるまで
仏の姿 三十二相・八十種好
如来
如来の着付
五智如来
印相
蓮台
菩薩
菩薩の着付
仏像の髪型
二十五菩薩
明王
愛染明王
不動明王
五大明王
明王の着付
天部
仁王の着付
四天王
邪鬼
須弥山
結 如来はどこにいる?
仏の姿に三つある
附 仏像ができるまで
仏舎利
天衣
数珠
持物
羅漢
地蔵菩薩の頭
仏の位

干支別守り本尊
十二神将

書誌情報

読み仮名 ヤサシイブツゾウノミカタ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 144ページ
ISBN 978-4-10-602102-2
C-CODE 0371
ジャンル ノンフィクション、日本の伝統文化
定価 1,430円

書評

ベストセラー誕生秘話

宮本和英

 東京芸術大学美術学部の学生は、三年時に古美術研修旅行に参加する。奈良にある芸大の宿泊施設を拠点に、二週間にわたって奈良や京都の古寺を巡り歩く。まあ修学旅行みたいなものです。毎晩宿舎で酒盛り、芸大名物“よかちん踊り”を教官学生ともども披露し、「まだ年期が足りない」などとOB教授に批評されたりしての乱痴気騒ぎ。だいたい毎日毎日、あまりに多くの寺と仏像を見て歩くので、一日の終わりにはどこのどんな寺や仏像を見たのか、もうわからなくなっている始末。少なくとも、私はそんな学生だった。美術史専攻のはずだったのに……。
 しかしこの研修旅行中、驚愕した出来事があった。一晩、保存修復技術の西村公朝教授による特別講義が行なわれたのである。それは、如来、菩薩、明王、天部(仁王)という四種の仏像の衣の着付けを、学生をモデルにして実際に着せて見せるというもので、「仏像の衣装って、ただの飾りじゃなくて、ホントに着られるんだっ!」というのが、ボンクラ学生だった私のホントに素直な驚きだったのである。温和な学生が如来になり、スレンダーな女子学生が菩薩になり、濃い顔だちのむくつけき男子が不動明王に、そして太めの体格のいい奴が仁王になったりするので、けっこう笑えるというか、妙に生々しいのである。その印象は強烈だった。
 時はめぐってその数年後、私は芸術新潮編集部の駆け出し編集者になっていた。
 ある日の編集会議で、西村先生のことが話題になった。長年の研究成果をようやく『仏像の再発見』という専門書にまとめられ、仏像の姿形から研究されたその独特な仏教観が知られはじめていた。私はここぞとばかりに、古美術研修旅行の際の体験を紹介しつつ、仏像の着付けを見せるということに編集部一同がかつての私と同じようにびっくりしているのがわかった。そうして「やさしい仏像の見方」が一九八三年三月号の特集として世に出た。不肖の教え子は、担当者として改めて先生に弟子入りし、聞けば聞くほど、仏像の造形にこめられた仏の教えの奥深さに目から鱗の落ちる思いをしながら、そんな意味があったのかとひたすら感嘆の声をあげつつ先生のお話をうかがった。彫刻家を夢見て美術学校の彫刻科を出て、とりあえずの腰掛けで美術院国宝修理所に入ったこと。赤紙で中国の最前線に送り込まれ、多くの戦友が戦死していく中、先生だけがなぜか一度も敵とまみえることなく一発の銃弾も撃つことなく復員したこと。修復が中途になっていた三十三間堂の千体仏が毎晩戦地での夢に出てきたことの意味をかみしめて仏像の修復に生きようと決意されたこと。さらに仏の教えを学ぶために僧籍に入られたことなど、その後の不思議な体験も含めて半生のいろいろなお話もうかがった。
 芸術新潮の特集号が、発売と同時に瞬く間に売り切れてしまったことにも驚いた。肝心の仏像の着付けは、先生が応援されていたインド古典舞踏家シャクティさんをモデルにして強烈なインパクトの写真となってページを飾ったが、そのちょっとキッチュともいえる生々しい迫力は、世の識者たちをも驚かせ、多くの書評に写真付きで紹介された。この特集がその後、「とんぼの本」シリーズの第二弾として刊行され、ベストセラーになり、さらにこの度新装改訂版が出るはこびとなった。
 私事になるが、当時、たまたま芸新の発売直後に結婚式をひかえていた私は、それを引き出物にするつもりでいたのにのんびり構えていて、社内で調達ができなくなってしまった。仕方なく営業部のデータから書店に電話をかけまくり、何軒もの書店を駆けまわって買いに走った。後にも先にも、書店で百冊ほどの芸新を購入した編集部員は、私だけである。さて、その後も先生には何度も芸新の特集をお願いした。その長いお付き合いの中で、ある時先生から、不動明王を呼び出す秘密の合図を教わった。つまり心身が萎えたとき、助けが欲しいときに呼び出しなさいという有り難い合図である。上司にいじめられ、後輩に突き上げられ、まことに辛いとき、私はこの合図を密かに行なっている。初めて告白するが、その法力たるやすごいものが、ある……。

(みやもと・かずひで 編集者)
波 2003年7月号より

担当編集者のひとこと

やさしい仏像の見方


 突然ですが、問題です。

Q1.仏像の手足に水かきのようなものがあるのは何故でしょう?

Q2.明王はどうしてこわい顔をしているのでしょうか?

 仏像好きの人でも、知っているようで知らない。知っていれば、もっともっと仏像を見るのが楽しくなる。そんな知識が隅から隅まで詰まっている本が、『やさしい仏像の見方』です。
 この本が最初に出版されたのは1983年11月。またたく間に大ベストセラーとなりました。数ある仏像解説書のなかでも、これこそが“本家本元”。もっともわかりやすく、もっとも中身の濃い本だと自負しています。 そんな名著が、このほど新装改訂版として生まれ変わりました。デザインが一新され、字が少し大きくなり、値段もお手頃に。仏像拝観のためのデータも追加しました。
 案内役は、仏師・西村公朝さん。美術院国宝修理所で、数多くの仏像の修復に携わってこられました。平易な言葉で、親しみやすく、解説を加えていただいています。そして美しく迫力満点の仏像の写真(飛鳥園撮影)の数々も、ぜひご堪能ください。
 では最後に、冒頭の問題に対する答えを書いておきましょう。

答1.水かきは縵網相(まんもうそう)といいます。仏像のモデルであるお釈迦さんは、水ももらさずに衆生を救い上げるということでしょうが、この水かきは、われわれにもあります。やせている人ほどはっきりとでてきます。お釈迦さんが苦行している頃は、がりがりにやせていたはずですから、縵網相がはっきりと見えたのでしょう。

答2.明王の表情は、人を救うための必死の形相なのです。たとえば子供が危ない遊びをしている時、母親は必死で止めようとします。その必死さが、こわい表情となって表現されているわけです。

2003/06/25

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著者プロフィール

西村公朝

ニシムラ・コウチョウ

(1915-2003)仏像彫刻家。1915(大正4)年、大阪府生れ。東京美術学校(現東京芸術大学)彫刻科卒。(財)美術院(旧美術院国宝修理所)の所長を長年にわたってつとめ、三十三間堂の十一面千手千体観音像をはじめとして、千数百体におよぶ仏像修理にたずさわる。1952(昭和27)年に得度。東京芸大教授、吹田市立博物館館長、京都の愛宕念仏寺住職などを務める。紫綬褒章、仏教伝道文化賞、天台大仏師法印、勲三等瑞宝章、東方文化賞等を受賞。『仏像の再発見』『やさしい仏像の見方』『仏像の見分け方』『釈迦と十大弟子』『わが般若心経』ほか、著書多数。2003年12月、逝去。

飛鳥園

アスカエン

1922(大正11)年、仏像を主とした古美術写真の開拓者・小川晴暘氏が創業。1968(昭和43)年に株式会社飛鳥園が設立され、小川晴暘氏の三男、小川光三氏が代表取締役に就任。文化財とその風土の撮影のほか、社寺の依頼を受けた書籍等の発行や、写真の貸出し業務などを幅広く行っている。

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