ホーム > 書籍詳細:裁判所の正体―法服を着た役人たち―

司法の独立は嘘だった! 
元エリート裁判官に伝説の事件記者が切り込む。

裁判所の正体―法服を着た役人たち―

瀬木比呂志/著、清水潔/著

1,620円(税込)

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発売日:2017/05/18

読み仮名 サイバンショノショウタイホウフクヲキタヤクニンタチ
装幀 Danita Delimont/Cover Photo(最高裁判所正面玄関(東京都千代田区))、Gallo Images/Cover Photo(最高裁判所正面玄関(東京都千代田区))、Getty Images/Cover Photo(最高裁判所正面玄関(東京都千代田区))、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 367ページ
ISBN 978-4-10-440503-9
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,620円
電子書籍 価格 1,620円
電子書籍 配信開始日 2017/06/02

原発差止め判決で左遷。国賠訴訟は原告敗訴決め打ち。再審決定なら退官覚悟……! 最高裁を頂点とした官僚機構によって強力に統制され、政治への忖度で判決を下す裁判官たち。警察の腐敗を暴き、検察の闇に迫った『殺人犯はそこにいる』の清水潔が、『絶望の裁判所』の瀬木比呂志とともに、驚くべき裁判所の荒廃ぶりを抉り出す。

著者プロフィール

瀬木比呂志 セギ・ヒロシ

1954(昭和29)年、愛知県生れ。東京大学法学部卒。1979年より裁判官。東京地裁、最高裁等に勤務。米留学。2012(平成24)年、明治大学法科大学院教授に転身。2017年度中は滞米在外研究。著書に『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(各講談社現代新書)、『リベラルアーツの学び方』(ディスカヴァー21)、『黒い巨塔 最高裁判所』(講談社)の他、筆名(関根牧彦)による4冊の書物と、『民事保全法〔新訂版〕』『民事訴訟の本質と諸相』『ケース演習民事訴訟実務と法的思考』(各日本評論社)等の専門書がある。『ニッポンの裁判』で第2回城山三郎賞を受賞。

清水潔 シミズ・キヨシ

1958(昭和33)年、東京都生れ。ジャーナリスト。新潮社「FOCUS」編集部を経て、日本テレビ報道局記者・解説委員。2014(平成26)年、『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞。同書は2016年に「文庫X」としても話題になる。著書に『桶川ストーカー殺人事件――遺言』(新潮文庫)、『騙されてたまるか――調査報道の裏側』(新潮新書)、『「南京事件」を調査せよ』(文藝春秋)がある。

目次

まえがき○清水潔
第1章 裁判官の知られざる日常
なぜ裁判官に一礼するのか/裁判官は人間じゃない?/法廷に遺影を持ち込めない理由/裁判官が身の危険を感じるとき/傍聴が裁判に与える影響/裁判所の暗さ/裁判官はどんなところに住んでいるか/裁判官の通勤風景/裁判官はどうやって判決を下すのか/裁判所の強固なヒエラルキー/裁判官の出世/裁判官は何を目指しているのか
第2章 裁判所の仕組み
裁判官に庶民の心がわかるのか/裁判官の天下り/裁判官の給与体系/なぜ裁判官をやめようと思ったのか/裁判官の反社会的行為/裁判官が統制される三つの理由/裁判官を追いつめる新たな再任制度/個人の問題か制度の問題か/日本の裁判所と世界の裁判所
第3章 裁判とは何か
民事裁判とは何か/「押し付け和解」が生まれる理由/一〇〇万円の印紙はなぜ必要なのか/民事裁判官と刑事裁判官はどこで分かれるか/刑事裁判とは何か/刑事系裁判官と裁判員制度の関係/民事系裁判官からみた刑事系裁判官の特徴/『不思議の国のアリス』と裁判
第4章 刑事司法の闇
足利事件――冤罪はなぜ生まれるか/起訴権の独占の弊害/北関東連続幼女誘拐殺人事件――誤っていたDNA型鑑定/裁判官は鑑定書をちゃんと理解しているか/陪審制と裁判員制度の違い/桶川ストーカー殺人事件――ゆがめられた判決
第5章 冤罪と死刑
飯塚事件/なぜ久間さんだったのか/死刑制度とその機能/裁判官とどう向き合うべきか/司法ジャーナリズムは機能しているか/ジャーナリズムと司法の劣化は相似形
第6章 民事司法の闇
名誉毀損裁判の高額化/スラップ訴訟/「一票の価値の平等」はなぜ重要か/国家賠償訴訟で国が有利な理由/原発訴訟と裁判官協議会/原発訴訟の判決・決定/憲法訴訟について/押し付け憲法論の不毛
第7章 最高裁と権力
最高裁の統制の方法/最高裁のヒエラルキー/最高裁長官と事務総局がもつ絶大な権力/裁判官が国の弁護士に?――三権分立は嘘だった/最高裁判例に拘束力はない?/日本の官全体の劣化/最高裁と時の権力の関係/「憲法の番人」ではなく「権力の番人」/最高裁判事の人事から見える構造の根深さ
第8章 日本の裁判所の未来
求められる国民のあり方/法曹一元化を提言した理由/国のあり方は司法で変わる/日本の裁判所とジャーナリズムが進むべき道
あとがき○瀬木比呂志

インタビュー/対談/エッセイ

裁判官は「ソンタク」する

清水潔

 今年の流行語大賞との声も聞こえる「忖度」という言葉。政権に対する諸々の疑惑に端を発し、マスコミの提灯記事、会社の上司や先輩に対する態度まで、世の組織では「ソンタク」流行りらしい。「みなまで言わさず推し量れ」は、日本人のどこかに染みついている悲しい性なのか。だが絶対にそんなことがあってはならぬ世界も存在するはずだ。
 静寂な空気が張り詰める裁判所――。
 見上げる壇上に姿を現す法服の裁判官たち。起立、礼。厳かに流れ出すのは神の声か。「主文……、被告人を死刑に処する」。時に人の運命を定め、すっとどこかに消えていく後ろ姿。彼らはいったいどこから来て、どこに戻るのか。どんな使命感や理念を持って働き、その結果としていかほどの報酬を手にするのだろうか。裁判所までどうやって通勤するのか。帰途にはグラスと焼鳥の串を手に、冗談のひとつでも飛ばすことがあるのだろうか……。
 事件記者として裁判傍聴の経験は少なくないが、その楽屋裏となると全く知らなかった私は、いつかチャンスを見つけて取材をしてみたいと思っていた。そんな折、元裁判官の瀬木比呂志さんに話を聞けることになった。退職した判事は多いけれど、実名、顔出しという条件で司法の裏を語れる人はなかなか見当たらない。その点、瀬木さんは自著『絶望の裁判所』などで裁判所の内幕や人事などについても綴っている。取材するならこの人だ。丸々3日間に及ぶ膝詰め取材。ここぞとばかりに積年の疑問をぶっつけ、その経過を束ねたのが本書である。当初は元裁判官と事件記者の「対談」スタイルを想定していたのだが、私の疑問は途切れることなくひたすら続き、瀬木さんはそれに正面から答え続けてくれた。結果として、対談というよりロングインタビューといった方が適切な内容になったかもしれない。瀬木さんの口から飛び出す回答は、私にとっては驚愕の連続だった。
 司法、立法、行政とは、言うまでもなく国家の三つの権力だ。これらが独立していることで権力の暴走を防ぐシステムが「三権分立」ということになる。立法権は国会が、行政権は内閣が持っているので、万一それらが暴走した場合には、違憲立法審査権を持つ裁判所が、「権力チェック機構」としてブレーキをかける。だが、もしもその裁判所が政治に「忖度」したらいったいどうなるのだろうか?
 一例を上げてみたい。近年、国会でも憲法判断について議論になることが少なくない。「合憲」か「違憲」か、というやつである。だが、実は裁判所ではずっと前から「どちらでも無い」という謎の判決が下っていたりする。「一票の格差」と言われる投票価値の平等に関する訴訟で、「違憲状態・・」という判断をしているのだ。なんとも意味不明ではないか。合憲と違憲の「間」を作り出して、判断を回避しているわけだ。瀬木さんはこれをズバリ「国会議員の既得権を守るためとみるのが一番自然」と断ずる。本来、一番厳正であるべき憲法判断ですらこうであれば、他の裁判はどうなのだろうか。疑問と疑念が次々と飛び出してくる。刑事事件の有罪判決率はなぜ99・9パーセントにもなるのか。国賠訴訟ではなぜ原告はなかなか勝てないのか。原発訴訟はなぜ二審でくつがえされるのか。最高裁の真の権限とは何なのか。冤罪が起こりうる構造、国策捜査、スラップ訴訟とは……。
 合計18時間に及ぶ取材で浮上した驚きの最たるものは、「三権分立は嘘だった」という空恐ろしい現実だった。どうやらこの国では司法すらも忖度の例外ではなかったらしい。
「いくら何でもそんな馬鹿なことは無いだろう……」と、思う人こそ、ぜひこの本を開いて頂きたい。我々が目にする厳正な雰囲気の法廷とは裏腹に、裁判所といえ単なる人間社会のひとつであることが垣間見えてくるはずだ。あなたの周辺にゴロゴロしているソンタク社会の一場面と重なるところも多いであろう。
 冤罪だった「足利事件」を取材した時、幼女殺人の汚名を着せられ、再審の判決でようやく無罪となった菅家利和さんに、裁判官が謝罪する光景を目の当たりにした。17年半にわたって刑務所に幽閉したその人に対し、法服姿の3人が壇上で頭を垂れる姿はどんなドラマのシーンよりも衝撃的だった。しかしあの時の私は、たまたま起きた不幸な誤判だと思っていた。冤罪などそう多くはあるまいと。だがこの取材を終えた今の考えは違う。あれは起こるべくして起こった悲劇だったのだ。それ程までに「裁判所の正体」というものを思い知らされた取材だった。自分だけは安全だなんて思わないほうがいい。

(しみず・きよし 日本テレビ記者・解説委員)
波 2017年6月号より

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