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「君、バレエ団に出向しない?」人生の第二幕は、戦力外通告とともに始まった。

  • 舞台化宝塚歌劇 月組公演「カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-」(2018年2月公演予定)

カンパニー

伊吹有喜/著

1,836円(税込)

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発売日:2017/05/22

読み仮名 カンパニー
装幀 ゴトウヒロシ/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 350ページ
ISBN 978-4-10-350971-4
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,836円
電子書籍 価格 1,469円
電子書籍 配信開始日 2017/11/03

妻子に逃げられた47歳総務課長。選手に電撃引退された女性トレーナー。製薬会社のリストラ候補二人に課された使命は、世界的プリンシパルの高野が踊る冠公演「白鳥の湖」を成功させること。しかし、高野の故障、配役変更、チケットの売れ行き不振と続々問題が。本当に幕は開くのか!? 仕事と人生に情熱を取り戻す傑作長編。

著者プロフィール

伊吹有喜 イブキ・ユキ

1969年三重県四日市市生まれ。出版社勤務を経て、フリーのライターに。2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。二作目の『四十九日のレシピ』がドラマ化・映画化される。2014年に刊行した『ミッドナイト・バス』は山本周五郎賞・直木賞の候補になり、2018年に映画化公開予定。他の作品に『なでし子物語』『BAR追分』シリーズなどがある。

書評

上半期No.1の面白さ絶対保証!

藤田香織

 読み終えた瞬間、「うおぉぉぉぉ……!」と、腹の底から自分の歓喜の声が込み上げてくるのを堪えきれない小説、というものに時々出会う。
 もちろん、世の中にはそんな衝動とは無縁の、じんわりしみじみ地味いい小説というものもある。でも、興奮して、無邪気に叫びだしたくなるような小説には、それとはまた違った幸福感があるのだ。書評家という仕事柄、出会ったからには、できるだけ多くの人にその喜びを伝えたい! と思うのだけれど、これがまた厄介なことに、そうした小説は「面白かったー!」と言う以外、なんだか言葉が見つからなくなる。小学生にも劣るが、言葉を尽くせば尽くすほど、何かが薄まる気がしてしまうのだ。
 でも、だけど。その単純すぎる感想が、時間と共に心のなかで膨らんでいく。むくむくと多幸感が広がっていく。本書は、そんな実に希有な物語なのである。
『カンパニー』というタイトルが示しているのは、ふたつの場所だ。ひとつは、戦前から配置薬を中心に事業を展開し、近年は積極的に異業種企業買収を行い規模を拡大させてきた「有明製薬」改め「有明フード&ファーマシューティカルズ」。創業百周年にあたる今年、社名を変更したばかりで、更に製菓会社を吸収合併し、大幅な社内改革にも乗り出していた。物語の視点人物となる社員の青柳誠一と瀬川由衣は、その余波を受け、リストラ候補に挙げられ出向を命じられる。ふたりの行き先が、もうひとつの場所である敷島バレエ団だ。
 有明製薬は今回の社名変更のキャンペーンに「黒髪の貴公子」「世界の恋人」と称される世界的プリンシパル高野悠を起用していたのだが、その最後を飾るイベントとして、年末に高野が敷島バレエ団に客演する公演を特別協賛することが決定していた。長年、総務畑を歩んできた青柳はその調整役を、健康増進課のスポーツトレーナーである由衣は高野の身体のケア役を命じられるのだが、公演が失敗に終われば社内に戻るべき席はないと言い渡される。ところが、来日した高野悠は、早々に腰を痛め満身創痍であることが発覚。予定していた「白鳥の湖」の王子役を踊りきる自信がなく、脇役に回りたいと言い出した。しかし、公演は高野が主役であることを前提に企画され、大きな会場も既に手配済み。敷島バレエ団は現社長の娘・有明紗良がバレリーナのトップを担っているという縁で有明製薬から支援を受けている小所帯のカンパニーで、観客動員は期待できない。高野が主演しなければ、公演の成功は有り得ない状況だった。
 働く場所を失いかけている青柳と由衣。ダンサーとしての「限界」が見えてきた高野。運命の年末へ向け、6月から月日を重ねていく物語は、ある種、登場人物たちの「終わりの始まり」という一面もある。ある日突然、妻に〈すべてがいやになった〉と言われ娘を連れて出て行かれた青柳は、このうえ職を失ったら働けない自分に価値はあるのかと思い悩むが、由衣も高野も、そのほかの人々も、同様に自分の「価値」を問い続ける。求められていること、自分が出来ること。追い求める場所、追われる場所。才能、能力、自分の「居場所」はどこにあるのか――。
 NHKでドラマ化もされた『四十九日のレシピ』や山本周五郎賞&直木賞候補にも挙がった『ミッドナイト・バス』、個人的には年間ベスト級だった『なでし子物語』など、誤解を怖れずに言えば、これまで伊吹有喜の小説は、「地味いい」系譜に属していたように思う。派手さはないが、読者の心に深くゆっくりと染み入る物語を、好ましく感じていた人も多いはず。
 けれど本書には、人の弱さや狡さや優しさや強かさといった細やかな心情描写はそのままに、スポーツ、芸能、芸術、演劇、社会、ひいては人生の酸いも甘いも、抜群のエンターテインメント性をもって描かれている。加えて、存在としては憎まれ役の代役王子・水上那由多と、「金で買った主役」を演じ続ける紗良のある場面は、憎らしいほどの胸キュン度だ。努力、情熱、仲間。青臭い言葉に泣きたくなる。レッスン、パッション、カンパニー。硬化しかけた大人心に火を点ける。「終わりの始まり」なんかじゃない。続いていく世界を信じたくなる。面白いよ! 面白いから! 自信を持って何度でも繰り返して叫びたいと思う。

(ふじた・かをり 書評家)
波 2017年6月号より

目次

プロローグ
六月
七月
八月
九月
十月
十一月
十二月
エピローグ

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