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超常現象―科学者たちの挑戦―

NHKスペシャル取材班/著

737円(税込)

発売日:2018/05/29

  • 文庫

あのユリ・ゲラーも光臨! 幽霊、超能力など数々の不可思議を、最新科学で検証する。

これほど科学が発達した現代社会においてなお、常識では説明のできない事象は確かに存在する。超常現象――。例えばイギリスの古城に姿を現す、ハンチング帽を被った男の幽霊。前世の記憶を詳細に語る子供たち。死後の世界を垣間見た人や、CIAにその能力を認められたユリ・ゲラー……。人類はどこまでその正体に迫ることができるか。「本物」は存在するのか。最先端の科学で徹底検証する。

目次
はじめに 大里智之
第一部 さまよえる魂の行方〜心霊現象〜 梅原勇樹
episode1 「幽霊」は未知なる存在か
魂や死後の世界は存在するか/幽霊が出るという家/SPR――華麗なる心霊研究の歴史/取材の方針/「最も幽霊にかれた城」/心霊調査のプロフェッショナル/プロフェッショナルは幽霊城で紅茶を飲む/立て続けの“異変”
episode2 「幽霊」を追い詰める科学者たち
ネズミの“背筋が凍る”実験/300万円のグリル・チーズ・サンドイッチ/ハンチング帽の男の幽霊/不気味なオレンジの光と物理学/不気味な光の新説/人はなぜ幽霊を見るのか
episode3 「死後の世界」を垣間見た人々
国際学会は異様な熱気に満ちていた/臨死体験の不思議な共通性/「死後の世界など存在しないでしょう」/体脱体験の謎/「急に体が浮き上がって……」バーチャル実験の被験者は語る/「私たちはそれで離婚しました」
episode4 生まれ変わりの子どもたち
前世の記憶を口にする子ども/生まれ変わりの研究に生涯をささげた科学者/「エディンバラに住んでいた」という日本の少年/前世の記憶は、科学で解明できるのか/前世の人物が特定されたという事例/未来へ――意識の科学/超常現象の渦中にあった者たち
第二部 秘められた未知のパワー〜超能力〜 苅田章
episode1 スプーン曲げはトリックだったのか
ユリ・ゲラーは今/スタンフォード研究所の実験/物理学者、プットフ博士の証言/動き出した方位磁針/透視能力――隠された物を見る力/科学雑誌『ネイチャー』に掲載/バナチェックの登場/超能力専門研究所への挑戦/曲げずに曲がったスプーン/衝撃の記者発表――「私たちはだました!」/幻に終わった「念力」の徹底的検証/ユリ・ゲラー、再び/「超能力を科学する」というテーマに挑む
episode2 国家が認めた超能力
超能力を科学する「超心理学」の黎明れいめい/9万ページの極秘文書/冷戦と超能力/ゲラーと超能力スパイ――秘められた関係/ソビエトの秘密基地を透視せよ/遠隔透視のメカニズム/超能力スパイ部隊・隊員第1号/透視した巨大潜水艦/不可解な指令――知られざる戦闘機、ステルスの存在/遠隔透視部隊の廃止/超能力スパイのその後/遠隔透視能力を検証せよ
episode3 テレパシーと脳
動物に備わる未知の力/日常生活に隠されたテレパシー/超能力は誰にでも備わっている潜在能力か/脳を探れ――ワシントン大学医学部の研究/「脳の同期現象」の謎/心が通じ合う? 不思議な経験/fMRIによる脳の解析/脳のテレパシー実験の課題と残された謎
episode4 すべての鍵は、人の“意識”
砂漠の祝祭、バーニングマン/「燃える巨人」を利用した実験/乱数発生器が人間の意識に共鳴する?/乱数発生器実験のルーツ/乱数発生器実験の舞台裏/クライマックス、7万人が起こす不思議な現象/ダイアナ妃の葬儀から生まれたプロジェクト/最も激しい変化が生まれた悲劇/意識と超能力/超常現象はなぜ受け入れられないのか/ノーベル賞学者が示す量子論という手がかり/乱数発生器と量子/テレパシーと「量子もつれ」/虫の知らせ/「未知なる力」、存在の可能性
あとがきにかえて 梅原勇樹 苅田章
特別対談 恩田陸×大里智之

書誌情報

読み仮名 チョウジョウゲンショウカガクシャタチノチョウセン
シリーズ名 新潮文庫
装幀 Stone/カバー写真、Getty Images/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
頁数 384ページ
ISBN 978-4-10-128380-7
C-CODE 0195
整理番号 え-20-10
ジャンル 心理学
定価 737円

書評

「絶対」はない

森田正光

 人はその人でしかないし、自分のモノの見方しかできません。しかしながら本を通じて様々な視点を得ることができます。他者を許容し、決して自分の物差を押しつけず、多様性を尊重する姿勢を失わないため、私は本を読み続けています。

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 その原点ともいえるのが『破戒』です。
 初めて手に取ったのは二十歳前後だったと記憶しています。いわゆる被差別部落の問題を扱った本で、読み終えたときには差別に対する怒りがふつふつと沸いてきました。なぜ生まれだけで人間が人間として扱われないのか。絶対にこんなことがあってはならない――。
 その後、何度となく読み返すうちに、 あくまで私の解釈ですが、『破戒』は告解の本ではないかと思うようになりました。
 私は本を読んでいて大切だと思った箇所は、ページを折って印をつけるようにしています。この本では折られたページ全てに「隠せ」という単語が出てきます。
 隠せ――つまり、自分の出自を隠し通して生きていけということです。
 誰しも秘密にしたいことはあるでしょう。他人から見れば取るに足らないことであっても、本人にとってはどうしても心に巣くう小さな罪。それを隠すのか否か。内なる罪を心に抱えて生きていくのか、それとも懺悔し、曝け出して生きるのか……。
 果たして人はどちらを選択するのか。主人公は告解の道を選びますが、私自身は隠すと思います。
 差別という社会的な矛盾だけでなく内なる罪とどう向き合うかを問うた本です。
 ところでハゲですよ。男にとって最大の恐怖は。『男と女の進化論』はその原因をはっきりと書いています。
 性欲が強い男はハゲやすい。なぜならこういう男性が自然に任せていると、扶養能力以上の子ができてしまうから。これを防ぐために頭皮の毛根付近の細胞がブレーキをかける。結果、女性から好かれなくなり、そういう機会が失われる。
 しかしながらお子さんもいらっしゃらないのに、危うくなっている男性も。こういったいわば「遺伝子のミス」を的確に指摘しているのがこの本の面白さです。純粋なサイエンスの眼を竹内さんによって開かされました。
 男ってね、哀しいんですよ。一割二割のモテる男性が総取りなんですから。本書では類人猿の乱婚や一夫多妻制について述べられていますが、人間はゆるやかな一夫一妻。本当によかった。すべての男に優しいシステムです。
 京都大学で動物行動学の王道を歩んだ方が、こういったユニークな本を描かれたことに価値があると思います。そして男だったら書けないです(ハゲとか辛すぎる)。読めば世の中が一歩進む本だと確信しています。
 しかし世の中には非科学的な現象が多々存在します。幽霊、テレパシー、超能力、生まれ変わり、臨死体験……。こういった「あるわけないよね」現象を『超常現象―科学者たちの挑戦―』で正面から取り上げたNHKは偉い。
 抜群に面白かったのは、バーニングマン。12メートルもの巨人像が燃やされるアメリカでのイベントを利用して、人間が最高に興奮状態にあ るときの意識がパワーを持っているのか乱数発生器で計る。つまり「超能力」を人間が備えているのか、極めて科学的に計測するのです。
 果たして数値の乱れは発生します。人間は他者に影響を及ぼす何がしかの力を持っていることは確からしいのです。言霊という言葉もありますし、私たちはまだ科学では証明できていない不思議な能力を持っているのだと思います。

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 今、私が一番興味を持っているのが量子。我々の記憶、意思は量子として存在し続けているのではないかとの説です。だから幽霊(生存時の量子の残存)、生まれ変わり(記憶の量子)、超能力(意識の量子)が存在してもおかしくない。バーニングマンはその片鱗を掴んだ実験だと思います。
 本書にはユリ・ゲラーが登場します。私はかつて彼の大ファンで、遥か昔、増上寺で行われたイベントにも参加しております。
 煌々とした会場でのショーは1時間。パッと会場が明るくなり、ハッと我に返ったところで終了しました。つまりイベントの最中、徐々に徐々に照明を落としていたのです。凄まじいトリック!
 断言します。ユリ・ゲラーはマジックです(笑)。

 (もりた・まさみつ 気象予報士)
波 2021年1月号より

著者プロフィール

NHKスペシャル取材班

エヌエイチケイスペシャルシュザイハン

NHKの大型ドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」を取材、制作するスタッフ。本書の基になった番組は東京、大阪、京都の記者・ディレクターが共同で制作した。

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