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さがしもの

角田光代/著

649円(税込)

発売日:2008/10/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

本、それは運命を変え、世界につながる小さな魔法。【全国学校図書館協議会篇・集団読書テキスト】教室に大きな感動を呼んだ傑作短編集!

「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。『この本が、世界に存在することに』改題。

目次
旅する本
だれか
手紙
彼と私の本棚
不幸の種
引き出しの奥
ミツザワ書店
さがしもの
初バレンタイン
あとがきエッセイ 交際履歴
解説――人間は本を読むために生まれてきた動物 岡崎武志

書誌情報

読み仮名 サガシモノ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-105824-5
C-CODE 0193
整理番号 か-38-4
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家
定価 649円
電子書籍 価格 539円
電子書籍 配信開始日 2016/09/02

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

「ねえ、羊子、本をさがしてほしいんだけど」
 あるときおばあちゃんはそう言った。
「いいよ、何。買ってくる」
「下の売店にはないよ。大きな本屋さんにいかなくちゃないと思うよ」
「わかった。明日放課後いってみる。なんて本?」
 おばあちゃんはじっと私を見ていたが、ベッドのわきに置かれた机の引き出しから紙とペンを出し、眼鏡を掛け、なにやら文字を書きつけた。渡されたメモを見ると、私の知らない名前に、私の知らないタイトルが殴り書きされていた。
「えー、聞いたことないよ、こんな本」私は言った。
「あんたなんかなんにも知らないんだから、聞いたことのある本のほうが少ないだろうよ」
 おばあちゃんは言った。こういうもの言いをする人なのだ。(本書170〜171ページ)

一行に出会う

「あんたがその本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」(本書174ぺージ)

著者プロフィール

角田光代

カクタ・ミツヨ

1967年神奈川県生れ。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、2005年『対岸の彼女』で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、2021年『源氏物語』(全3巻)訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞。著書に『キッドナップ・ツアー』『くまちゃん』『笹の舟で海をわたる』『坂の途中の家』『タラント』他、エッセイなど多数。

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